第5話

体育祭当日、俺はある程度能力を使えるようになった。多分今までの人生で一番努力した。


その分俺は身体能力、学力面では本気を出せば超人と言われるレベルまで力を引き出せる。


さあ約三ヶ月本気で死にそうなくらい努力したんだが、どのくらいやれるか


今回の体育祭のスケジュールはクラスのダンスと 赤組、白組に分かれてからの合同ダンス。その後に綱引き、玉なげ、そして個人リレー、クラスリレーの順にある。


 リレーの方は適当に流すとして、問題なのが綱引きだ。


綱引きで相手の力が強すぎてモモが手を勢い余って怪我してしまった記憶が俺にはある。


だから俺は気づかれないように後ろから相手と接戦するぐらいの力を出してなんとかやり過ごす。流石にバレないだろうしな


みんなが順番に指定の位置に着き綱を握る。

 

一斉に掛け声をし、相手に負けじと綱を握り引き始める


「大丈夫だよ、このままいけるよ早紙さん」

「っそうだね、ありがとう長谷川くん!」


おい、俺の前二人で何いい感じになってるんだ。恋を伝えない決意をしたけどもいざ目の前で仲が良くなるシーンを見られるとなかなかに堪えるな。


そう思いながら俺は能力を発揮して相手の勢いにそのまま流されないように調整しながら力を込めて綱を握る。そして、俺たちは僅差で相手チームに負けた。


「…惜しかったね!いー君!」


「…ああ、そうだな」


久々にモモの方から話開けてきた。

最近会話も減り、登校も別々な事を気にしていたのだろうか。


全然気を使わなくていいのに。


なにはともあれこれでモモに襲いかかる脅威からは逃れられたはず。


流石に綱引きで怪我なんて可哀想だしな。


その後も順々に体育祭は進んでいき、残すは個人リレーとクラスリレーのみとなった


先にどうやら個人リレーが始まるらしい。


俺の番が来たので指定の位置につきそれらしいポーズをとりながらスタートを待つ。

「位置について、よーい…」

 バン!と音が鳴り一斉に5人が走り出す。


適当に流すか…と内心思いながら三番の位置をとりゴールしようと決める。


先頭二人を眺めながら走っていると後ろから長谷川の姿が視界の端に映った。


…お前も走っていたのかよ。


めんどくせーと思いながら少しスピードを上げる。こいつにだけは負けたくねぇ。


すると長谷川はさらにスピードを上げて追いついてきた。くそ、主人公がよ…。


気がつくと前を追い越し先頭に立っていたので、少しでも目立ちたくなかった俺は気付かれないようにスピードを落とした。


ゴールは一着が長谷川で二番は俺だった。


三番取ろうとしていたのにムキになって二番に着いてしまったと反省しながら、自分のテントに帰ろうとする。


「待って、池水くん!」


後ろから声がしたので体を半分だけ向ける。


「…どうした?」


「さっき、一緒に走ってたよね?池水君って足速いんだね」


「そういうお前はスロースターターでも結構足速いんだな」


「あはは…ちょっとスタート失敗しちゃってね」


こいつの事は恨んではいないがそれが嫌っていないという事ではない。なんせモモの将来の夫なんだからな。


だからなるべく話しかけないようにしていたんだが、まさか向こうから話しかけてくるなんてな。


まあ、このまま立ち去るのも感じ悪いからせっかくなので話すとしよう。


「そういえば池水君ってあんまり教室ではおとなしい方だよね、早紙さんから聞いたんだけと中学の頃はもっと元気な方だったって…どうして」


おいおい、いきなりぶっ込んでくるなこいつ。お前こそどうしたんだよ。


「うん、まぁなんというか心境の変化というやつだよ」

「へぇ、そうなんだ」

何をしたかったんだコイツ。


「お前の方は最近モモと仲がいいみたいだな」

「?そうかな。普通だと思うけど」

「恋しちゃったんじゃないの?」


「ど、ど、ど、どうしてぇ!!池水君もいきなり変なこと言うねぇ!?」


ここはあえてぶっ込んでみる。

「いや、?普通に側から見てて仲が良さそうだなぁと思ったんでもしかしてもう付き合ってんじゃないかなぁと」


「いやっそんな僕なんかが早紙さんと付き合うなんて」


お前、今こう言ってるが将来結構モモに向かってドSな感じしてるからな?クリスマスでの出来事、俺は忘れねぇ。


「…てっきり池水君は早紙さんのこと好きなのかと思ってた」

「どうしてそう思うんだ?」

「だって家が隣で、幼稚園から一緒で池水君はかっこいいし早紙さんはその…か、可愛いし。ご近所の付き合いだってあるみたいだし、お似合いだなって」


お前がそれを言うな。


「…まぁアイツとは逆に近すぎて兄妹みたいなもんだから、今更恋愛感情なんてねえよ」

「っ!!そうなんだ!」

おい露骨に嬉しそうにするんじゃない。


「まぁそう言うことだ、だから頑張れよ!」


笑顔をつくり、やつは顔を赤くしながら「だから何が!?」とか言ってるが、俺らはその後も話ながら自分たちのクラスのテントに戻った。

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