ちゅうしたい。
怠惰★スター
第1話
大好きなあなたはきっと私の思いなんて気づかないでしょう。気づけないでしょう。
だってあなたはバカだもんね
そしてあなたは幸せだもんね
私は…………
私の感情は「愛憎」だから。
ーーーーーーーー
「すずれ〜〜‼︎お待たせ!……待った?」
「大丈夫だよ」
いつもの言葉をやりとりし歩き出す私。
すずれとは朝に近くの公園で待ち合わせをして、いつも一緒に登校している。
すずれとは小学校からの仲で中学生になってもずっと仲良しだ。
サッ
ちょうど今、私の横を自転車が通り過ぎていった。東中の制服だった。
私とすずれが住む地域だけは進学先を東中と北中、どちらかを選ぶことができた。
私は小六のとき二つの中学の文化祭をそれぞれ見に行って、校舎が綺麗で魅力的だと感じた北中を選ぶことにした。
毎年私の小学校からは東中の方に多く進学する人が多い。
すずれは、東中だと以前言っていた。
実はすずれとは当時、そんなに仲がいいわけではなかった。
そもそも仲が良かった時期は同じクラスになった小三、小四の時くらい。高学年に上がり、クラスは別で当然と関わる機会は減っていった。
最終学年、みんなのリーダー、最上級生……
そんなことどうでもいいくらい私にとってその年は「最悪」だった。
私は孤独だった。
私が1番恐れていて常に回避してきたこと、それが「孤独」。
別に友達がいないわけじゃない。ただクラス内がグループ化された生活の中で一人は辛すぎる。
最初は一人じゃなかった。同じクラスに特に仲のいい友達が一人いて、その子といつも一緒にいた。
でもある日からその子は他の子と行動するようになった。
別にその子と仲が悪くなったわけではない。ただあっちが私以外の人と仲良くなっただけだ。変なことでもないし、非のある行動でもない。
どちらも悪くないし、相手を責める理由も一切ない。
ただただ辛かった。寂しくてしょうがなかった。
クラス内の染まり切った内輪に入ろうとする度胸と精神が私には無かっただけで……
「一人」、たったそれだけのことでこんなに引きちぎれそうな思いをするなんて
私の居場所は無くなった。
それからはずっと気分は酷く落ち込み、体調も頻繁に崩すほどであった。寝れない夜に苦しめられたりもした。
それほどこの出来事がショックだった。私が誰よりも「孤独」に敏感だったから―
そんな日が続き、いつの間にか卒業日が近づいてきた。
帰り支度をしていると私のもとに急にすずれがやって来た。
「みくー、すず北中にしたよ。」
突然のことで私は大きく目を見開いた。
彼女の顔を見て、同時に嬉しさが込み上げてきた。
「え!え!なんで?やったー‼︎すずれと一緒?!?!」
「みく、これから毎日一緒に学校行けるよ!」
喜びと興奮で勢いづいてすずれの胸に飛び込んだ。
ずっとずっと苦しくてこれからのことも不安でしかたなかった。一人で小学校を卒業し、一人で中学校に通う日常しか想像できなかった。
だけどもう違う!すずれがいる‼︎
暗雲がかった一年にやっと光が差し込んだような、そんな晴々とした気分だった。
安堵よりも驚きよりも私の心は嬉しさでもう、いっぱいだ。
「え!前に東中にするって言ってたよね、なんで?」
「みくが一人で学校行くのかわいそうだなって思って、だから北中にした」
え、……‼︎
「それに前、みくが北中は東中より給食美味しいらしいとかマラソン大会こっちは無いとか言ってたから北の方が良いかなって。お父さんとお母さんにもそれ言ったら北中良いじゃん!ってなったの」
待って………………
「すずれ……みくが寂しいからと思って一緒にしてくれたの……?」
「うん。」
私の中からいろんな感情がグッと込み上げてきた。
すずれの表情は穏やかに笑っていた。
ーーーーーーーー
私はあの時のすずれの優しさを、言ってくれたことを忘れることはない。
あの日から私にとってすずれは特別な存在となった。
優しい追い風に背中を押されながら視線を横に流す――
「ねえ、すずれ」
「ん?」
「みくと学校同じで嬉しい?」
「もうめっちゃくちゃ嬉しい」
「ふふっ、まじ大好き」
ちゅうしたい。 怠惰★スター @syouraiyuubou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ちゅうしたい。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます