第10話

ホテルを出ると、加賀見一夜に忠告されていたように、

ガラの悪そうな男の人や、酔っぱらいのサラリーマンに声を掛けられたり、絡まれたりした。



それを振り切るように、昌也の住むマンションへと来た。



昌也の部屋は、オートロックのないマンションの一階。



まずは、ベランダ側に回り昌也の部屋を見たが、カーテンが閉まっていても部屋の電気が真っ暗なのが分かった。



それを見て、ああ、本当に仕事で居ないのか、って、ホッとした。



なのに、ちょっと、残念のようなよく分からない気持ちがある。



今夜は本当にたまたま仕事だっただけで、

今まで過去に何度も私は騙されていたかもしれないのにって。



今日は、たまたまで。



私はきっと、昌也を信じていない。



けど、電気が消えているからって、絶対に留守とは限らないよね?



そう思い、玄関の扉の方へと行き、鍵を挿し込み回す。



ガチャ、と解錠される。



扉を引くと、ゆっくりと開くが、途中でそれは止まる。



U字ロックがしてある。



昌也は、鍵だけじゃなく中からロックする習慣がある。



昌也が中に居るのもそうだけど、下ろした視線の先に、私のものではない女性物の靴がある。



部屋の中は、静かで真っ暗だけど。



もう昌也は寝ているのだろう。



私ではない、女性と。

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