第11話
◇
此処に戻る気満々だったのか…。
そのラブホテルの場所も部屋番号もしっかりと覚えていた、私。
707号室のチャイムを押すと、
「おかえりなさい」
と、加賀見一夜が扉を開いて私を出迎えてくれる。
先程迄していた眼鏡は掛けていないから、変装の為だけの伊達眼鏡なのかな?
彼の背を追い部屋の中に入ると、
ベッド脇にあるテーブルに、ホールケーキがドーンと置いてある事に気付いた。
そのケーキは生クリーム系で色々なフルーツが載っている。
色々なフルーツなのだけど、メインはメロン。
「この辺り、夜の店ばかりだから、こうやってド派手なケーキしか売ってなかったけど」
「あの、もしかして、それって私に…」
もしかしたら、この人がケーキが食べたくて、買って来ただけなのかもしれないけど。
「そう。バースデーケーキ」
そう言われ見ると、チョコレートのプレートに何か書いてある。
"mako&ichiya
Happy Birthday"
それが筆記体だったのもそうだけど、少し文字が潰れていてよく見ないと気付かなかった。
まこ…いちや…。
「私の名前だけじゃなく、あなたの名前もある」
「うん。俺も今日が誕生日…って言うとややこしいね。
真湖ちゃんが10月5日で俺が6日。
なんと、俺達誕生日が1日違いなんだよ」
「それは…凄いのかな?
お誕生日おめでとう。
日付が変わっているから、もうあなたの誕生日だね?」
「ありがとう。
ケーキ食べない?
せっかく買って来たし…って言っても、
すぐそこの店なんだけど」
そういえば、このホテルの斜め向かいにケーキ屋さんがあった。
夜のお店が多いから、こんな深夜でもやっているんだな。
「あ、さっきホテルの奴に皿とフォークは持って来させたんだけど。
ナイフないから、切れないな」
「もう、そのまま食べちゃえば?
私、これくらいならペロリと食べれる」
テーブルの上の、皿の上に置かれているフォークを手に取る。
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