第11話



此処に戻る気満々だったのか…。



そのラブホテルの場所も部屋番号もしっかりと覚えていた、私。




707号室のチャイムを押すと、



「おかえりなさい」



と、加賀見一夜が扉を開いて私を出迎えてくれる。



先程迄していた眼鏡は掛けていないから、変装の為だけの伊達眼鏡なのかな?




彼の背を追い部屋の中に入ると、

ベッド脇にあるテーブルに、ホールケーキがドーンと置いてある事に気付いた。



そのケーキは生クリーム系で色々なフルーツが載っている。


色々なフルーツなのだけど、メインはメロン。



「この辺り、夜の店ばかりだから、こうやってド派手なケーキしか売ってなかったけど」



「あの、もしかして、それって私に…」



もしかしたら、この人がケーキが食べたくて、買って来ただけなのかもしれないけど。



「そう。バースデーケーキ」



そう言われ見ると、チョコレートのプレートに何か書いてある。




"mako&ichiya

Happy Birthday"



それが筆記体だったのもそうだけど、少し文字が潰れていてよく見ないと気付かなかった。



まこ…いちや…。



「私の名前だけじゃなく、あなたの名前もある」



「うん。俺も今日が誕生日…って言うとややこしいね。

真湖ちゃんが10月5日で俺が6日。

なんと、俺達誕生日が1日違いなんだよ」



「それは…凄いのかな?

お誕生日おめでとう。

日付が変わっているから、もうあなたの誕生日だね?」



「ありがとう。

ケーキ食べない?

せっかく買って来たし…って言っても、

すぐそこの店なんだけど」




そういえば、このホテルの斜め向かいにケーキ屋さんがあった。



夜のお店が多いから、こんな深夜でもやっているんだな。




「あ、さっきホテルの奴に皿とフォークは持って来させたんだけど。

ナイフないから、切れないな」



「もう、そのまま食べちゃえば?

私、これくらいならペロリと食べれる」



テーブルの上の、皿の上に置かれているフォークを手に取る。

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