第6話

「聖王会の会長ともあろう人が、

一人でこんな風に出歩いて、何してるんですか?

危ないですよ?」



誰かに命を狙われていても、おかしくない人。



常に誰かが、ボディガードに付いているはず。




「だから変装してんの」



そう言って、再び眼鏡を掛けた。




この眼鏡は、変装なのか。




「時々、こっそりと、ね。

常におっさんらに囲まれてて、けっこう息苦しいから。

息抜き」



そう言われ、この人の写真を思い出すが。



屈強そうなスーツ姿の男性達にサイドを囲まれていた。



この人自体もスーツ姿で、今は下ろしている前髪も、後ろに流していた。



この人、こうやって近くで見ても本当に若く見えるけど、

年齢は確か、33~34歳くらいだったはず。



それでも、あんな大きな暴力団の組の会長になるには、あまりにも若い。



この人の母親側の祖父の、及川竜三(おいかわりゅうぞう)が、

伝説と迄言われている、聖王会の初代の会長だったから、だろうか?



この人の父親は堅気で、建設会社を経営しているらしいが…。




「私、あなたの事は色々と知ってる…」



知ってるけど、こうやって会うのは初めてで。



なんだが、芸能人にでも会ったような感覚。




「そう。警察官の彼氏から、色々俺の事聞いてる?

あ、もしかしたら、真湖ちゃんの彼氏、俺知ってるかな?

K署の組対の誰?」



「本堂昌也…」



そう言った後、名前言って大丈夫だったかな?と不安になる。



「んー、誰?それ?

そんな雑魚知らないな」



昌也の名前を知らなくて安堵するよりも、

そうやって昌也を馬鹿にされた事に腹が立つ。




「じゃあ、今夜はその警察官の彼氏とデートだった?」



「いえ…」



そう否定しなくても、この人は私の答えを分かっている。



そんな顔をしている。



「その真湖ちゃんの彼氏は、彼女の誕生日も祝ってくれないような人なんだ?」



「違う!

本当はデートの約束してたけど、

急に仕事になって」



警察官の彼は、とても忙しい人。



こうやって、仕事のせいで会う約束をドタキャンされる事も、今まで何度かあった。

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