【第4話】廃種

「美味ちぃ♡ お姉ちゃんのおっぱい……美味ちぃ♡ チュ~~~♡♡♡♡♡」


「あぁぁぁん♡ いい子、いい子ね。エスカちゃん♡

 もっとも~っと、いっぱい飲んでいいからね~♡」


「うん♡ チュ~~~♡♡♡♡♡」


「うぅぅぅん♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


「……」


 どうやら今のエスカには、朝ごはんは必要無いようだ……じゃなくて!!


「お、お前!? そこで一体何をして……」


「……あら? その服装……あなたが神使みつかいちゃんだったの?

 あらあら。御者のお席で寝ているから、

 てっきりこっちの子が神使みつかいちゃんだと思ってたけど」


「チュ~~~~~♡」


「んんっ♡ どうやらお姉ちゃん、間違っちゃったみたい♡」


「間違ったって……狙いは私であったと?」


「ええ、勿論♡ ……んんっ♡ わざわざこんな……あんっ♡

 神使みつかいが通る……んふっ♡

 通る所で待ち伏せしてたのだって……あっ♡

 あなたのような神使みつかいと出会うたm……んんんっ♡♡♡」


「まずは母乳を吸わせるのやめろ!!」


 おかげで全然、話が聞けないんだが?!


「だ、駄目よ。この子が、お姉ちゃんのおっぱいを望んでるんだもの。

 なら、お姉ちゃんは妹の望みを全て叶えて……


「チュ~~~~~~~~~~~♡♡♡」


「あぁぁぁん♡♡♡ ダ、ダメよ、エスカちゃん……

 そんなに強く吸ったら、お姉ちゃんの濃いのが……

 まだ誰にも飲ませたことのないお姉ちゃんの特濃ミルクが、

 いっぱい引き出されちゃう~~~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


「ぢゅるぢゅるぢゅる~~~~~~~~~♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」


「……何なんだ、一体……」


 そして、やっぱりそれはお母さんの間違いじゃないのかと、呆れるしかできない私であった……が、それでも彼女に対しては油断ができないと気を引き締めてもいる私。


 なにせ彼女が……廃種ポリュシアンであったためだ。


 廃種ポリュシアン

 それがいま目の前にいる、我ら神使みつかいが排さねばならない存在の一つ。


 我ら神使みつかい神子みこは、聖術マナライズという聖術具ライズ・ツールを用いて知覚できる目には見えない物質たる瑪那マナを使って、自然の力の模倣ともいうべき力が使えるのだが――というより、使えないと神子みこに昇格できず、神子みこ見習いや年齢制限が来て引退することになっているのだが……それはそれとして。


 彼女を含めた廃種ポリュシアンという存在は、瑪那マナとはまた別の目には見えない物質――魔素マソによって体を侵食された者たちであり、我らのように聖術具ライズ・ツールを手の甲に装着せずとも廃術マソライズという似て非なる力が使えたりする。


 だからと油断できないということでもあるのだが、それ以上に厄介なのは、その廃術マソライズはとても扱いが難しいからと暴発させてしまうところ、そして廃種ポリュシアンたちはそのことごとくが自分の感情に振り回され暴走してしまいがちで、話ができないことが多いというところにある。


 おかげで、見た目がいびつ――体全体や一部が肥大化したり、獣のような部位が生えてきたり&部位に変異したり、火や雷といった属性の廃術マソライズを体から溢れさせたり等――なのは個人の主観だが、それと相まって基本的には人々から恐れられ、だからと元は人間だったとはいえ、そんな危険な存在は早めに摘んでしまおうというのがフォルグの認識だったと、フォルグ条約には明確に廃種ポリュシアンの処分が明記されていたりもする。


 だからこその廃棄すべき種ポリュシアンという名が付いている訳だし。


 ちなみに獣にも似たような現象が起こり、それは廃獣ラビッシュ・ビーストと呼ばれているのだが、今はいいか。


 そんな相手だからと、形はどうあれエスカを人質に取るような状態、しかも運の悪いことに私の獲物であるレイピアも彼女の側に置いたままという、下手な動きができない状態であったと、私に緊張がはしr……


「チュ~~~~~♡♡♡♡♡」


「んんんっ♡

 ……あ、あの、エスカちゃん? そろそろおっぱい、いい頃じゃ……


「チュ~~~~~♡♡♡♡♡」


「あぁぁぁん♡♡♡♡♡ ダ、ダメェェェ♡♡♡♡♡

 それ以上飲んだら、他の子たちの分が無くなっちゃうぅぅぅ♡♡♡♡♡」


「チュ~~~~~♡♡♡♡♡」


 ……はしった気がしただけだった。

 だって、救わないといけない奴が、どうやら大丈夫そうなんだもの。


 おかげで作戦を変更したと私は、彼女がエスカに夢中な間に、コッソリ荷馬車の中――広くもないが2人は悠々と横になれるサイズ――を移動しつつ、急いでレイピアを手に……



「……お姉ちゃんのおっぱいは幸せの味だよ?」



 急いでレイピアを手にしようとすると、荷馬車の外や屋根の上から何人もの少女が、中を覗くように顔を見せてくるのであった。


 ……って、びっくりしたなぁ! もう!!




 ……って、あれ?




「……お前、ニネットか?」



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