偏見から生まれた悪魔

かいとも

偏見から生まれた悪魔

「なんで今日も無茶をしたんだ」

「無茶?メイルを安全にするためには、無茶をしなきゃいけないんですよ」

「お前を治せるのは神だけなんだぞ?天使でも悪魔でも治せないんだ。

それに知ってるだろ?メイルがお前に向けている感情」

「知ってます。

だからこそ、これをメイルに渡したいんです」


<ハカナが机の上に、小さい白い箱を置いた>


「本気なんだな?」

「俺も迷いました。

同性と結婚するより、異性と結婚した方がいいと。

だけど、メイルが18になっても俺を好きでいた。

その想いに答えたいんです」

「そうか…なら、今から起こる魔力暴走に行くな。

お前の未来が幸せではなく、不幸の未来に行くぞ」

「不幸ですか…それでも俺は、マイラン様の国を守りたいんですよ。

この国で生まれ、この国で育ちましたから」

「そうか…お前の幸を願っているぞ」


<マイランがそう発言した瞬間。

 大きな鐘の音が国中で鳴り響き、放送も流れた>


「今アカエル家で魔力暴走発生中。

近くにいる方は、すぐ避難してください。

そして、対処出来る方はすぐさま向かってください」


 俺が不幸になる未来…。

 今行かなければ、俺の未来は不幸にならない。

 だけど俺は向かいますよ、マイラン様。


<神から不幸になると発言されても、ハカナは現地へと向かった。

 行かなければ、自分の未来が幸せだとしても。

 アカエル家には、自分を愛してくれているメイルが居るから>


<アカエル家現地には人が群がっていた。

 そこがどんなに危険でも、国直属の部隊がなんとかするから。

 誰が魔力暴走したのかを知りたいから>


 なんで魔力暴走の現場に群がるんだ…。

 それも、アカエル家で働いている人達の周りに人が居るな。


「お前ら何してんだ!死んでも知らないぞ!」


<叱られ退いていく人も居れば、鋭い目付きで視てくる人もいる>


 この群がりにメイルとハナタが居ないな。

 どちらかが魔力暴走…。

 俺が不幸になるって事は…。


<ハカナは走りながら家の中に向かう時だった。

 魔力暴走したメイルと傷だらけのハナタが、戦いながら玄関から出てきた>


「皆さん速く逃げて!そこに居るハエルが息子を魔力暴走させた!」

「なに嘘を言ってる!ハナタ!」


 何故嘘をつかれた…。

 だが速く向かわないと!あの剣は駄目だ!

 まさか…は、そういう事かよ…ハメられたか…。


<ハエルはハナタに、金縛りを使って動けなくした>


「待ってろよ!今助けるからな!俺はまだ、お前に伝えたい事があるんだ!」


<邪魔されないように、魔力結界を使って治療を始めた。

 そして5分後。

 ハエルは絶望した>


 くそ…治せない…。

 俺が来るまでにどれだけ魔力を流されたんだ…。

 いや…分からない…。

 俺はどうなったっていい!

 だから…どうか…治ってくれ!…。


<願いながら治療した。

 だが、その願いは何処にも届かなかった。

 いや…届かなかったは違う…届いていたが、治療出来なくなる所まで行っていた。

 メイルの皮膚にヒビが出てくる。

 上から下へと、足先までヒビが到着した時…メイルの体は粉々に割れた>


 俺は…なんの為にやって来たんだろう…。

 俺は…最強だと言われていた…。

 なのに…なんでメイルを救えなかった…。

 俺は…伝える事が出来なかった…。

 好きだと…結婚を前提に付き合おうと…。

 あー…ハナタの嘘を信じ、結界を壊そうとしてくるこいつら…。

 俺は…ハメられたんだな…。

 これが不幸…本当に不幸ですね…マイラン様…。


<ハエルは生きる意味を無くした。

 そんな時、ハエルの結界が何者かに壊された>


「ハエル…」

「王がここに来ていいのか?」

「俺は全てを知らない。

ただ、ここに向かった方がいいとマイラン様から教えられた。

取り敢えず着いてきてくれ」


<ハエルはサイラの馬車に乗って移動した。

 そして連れてこられた場所が協会だった>


「なんで協会に?」

「マイラン様に、ハエルの身柄を渡してほしいと言われた」

「そうですか」


<マイランの部屋に向かった2人。

 サイラは出ていくようにと伝えられた>


「これが不幸だよ」

「本当に不幸ですね…。

契約書の最後の意味を知りました。

ハメる為に、最後の条件を出したんですね…」

「そういう事だ。

ここからは噂が流れていって、偏見でお前が犯人になる」

「じゃあ、なんで俺はここに連れられたんですか?」

「身柄を安全にするためだ。

ハナタはお前を賞金首にするだろう。

だから、俺の下で働いてくれ」

「神の下で人間が?いいんですか?」

「神である俺がいいと言っている」

「ありがとうございます…」


 <ハエルとハナタの契約書

 ハナタが一生息子のメイルと会わない条件として、ハエルの1ヶ月の貢献を全て譲渡する。

 この契約を3人の秘密とする。

 この秘密を誰かに教えた場合、王の腕を辞め、死亡する事>


<数時間後、ハエルがメイルの事を魔力暴走したと他の国まで流れた。

 なにも貢献出来なかったハエルが、嫉妬して自分の手を汚さない為に、メイルを魔力暴走させ、父親を殺させようとしたと。

 その行動のせいで、ハエルは悪魔とも言われた>


「ちょっと出てくるね。

ここは完全防音だ」


<マイランが部屋を出た時。

 ハエルはポケットの中から、結婚指輪が入ってる箱を取り出した。

 ハエルはポトポトと涙が落ちていた>


 本当に…俺は…これを渡す事も…伝える事も出来なかった…。

 ハナタが1ヶ月前に妻を無くし、無くした理由をメイルのせいにした。

 だから俺は、メイルを幸せにしたかった…。

 なのに俺は…ごめん…メイルごめん…。

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