第6話整備班の魔術師



「藤堂さん、この音、聞いてもらえませんか?」


整備室でミライがC-GEARを指さす。宇宙での初訓練を終えて数日、スターキャッチャーから微かな異音が聞こえ始めていた。


「ふむ」藤堂は目を細める。「確かに、何かおかしいな」


静かに耳を澄ませる藤堂の横で、サポートトリオが忙しなく動き回る。


「診断開始します!」モッくんが機械に向かって飛び込む。

「データ解析、準備OK!」キーちゃんがホログラム画面を展開。

「異常検知プログラム、実行中」バッくんが淡々と報告。


「すごい...みんな息ぴったりですね」


ミライが感心していると、藤堂が懐から古びた工具を取り出した。


「これは...」


「私の相棒さ。25年前、初めて宇宙に行った時から一緒の」


その時、サポートトリオが一斉に声を上げた。


「発見!第三関節に微細な宇宙塵が!」

「動作精度が2.3%低下してます!」

「対処法、算出完了」


藤堂はにっこりと笑うと、古びた工具を器用に操作し始めた。その手さばきは、まるで魔法のよう。


「職人技だね」


アリスが訓練の合間に顔を出した。タクミも珍しく興味深そうに作業を見つめている。


「ところでミライちゃん」キーちゃんが声をかける。「あなたの掃除道具、実は参考にさせてもらってるのよ」


「え?」


モッくんが得意げに説明する。

「あの静電気防止ブラシの原理を応用して、新しいメンテナンスツールを開発中なんです!」


「本当ですか!?」


ミライが目を輝かせる中、藤堂の作業が完了した。


「はい、これで完璧」


起動音が、さっきより明らかにクリアになっている。


「すごい...まるで魔法みたい」


「魔法じゃない。経験とチームワークさ」藤堂が穏やかに微笑む。「整備班の仕事は、ハンターたちの命を守ること。これからもよろしくな」


その言葉に、ミライは深く頭を下げた。すると、ルナが優しく語りかける。


「ミライ、あなたも彼らから学べることが、きっとたくさんあるわ」


「はい!...あ、そうだ!」


「なに?」


「整備室の床、ピカピカに磨かせてください!」


一同の溜息の中、藤堂だけが大きく笑った。


「いいだろう。だが今度は、私たちの新型クリーニングロボットと競争だ」


「えっ!?」


整備室に明るい笑い声が響く。窓の外では、次の宇宙へと続く道が、静かに輝いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月12日 21:00
2024年12月13日 21:00
2024年12月14日 21:00

SPACE SWEEPERS - スペーススイーパーズ -宇宙(そら)の掃除屋、始めました。- ソコニ @mi33x

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画