第3話僕らの先輩実力者



「今日は先輩たちの実技訓練を見学してもらう」


ケンイチの声に、ミライは大きくうなずいた。昨日の失敗で、まだ少し体が痛い。それでも、先輩たちの技を見られる期待に、目は輝いていた。


「まずはアリスの演習から始めよう」


訓練室に入ると、アリスが真っ赤なC-GEAR「バタフライネット」に身を包み、宙に浮かんでいた。その周りには、大小様々な模擬デブリが配置されている。


「では、始めます♪」


アリスの声が弾むと同時に、鳥型AIのフェニックスが現れた。


「行きますよ、アリス」


次の瞬間、アリスの動きが始まった。まるでバレリーナのように優雅に回転しながら、複数のデブリを同時に捕獲していく。


「すごい...まるで宙を舞うみたい」


ミライが感嘆の声を上げる横で、タクミが黙々とデータを入力している。


「アリスの捕獲成功率は98.2%。現役ハンターの中でもトップクラスよ」


ルナが小声で解説してくれる。


演習が終わり、アリスが着地すると、今度はタクミの番だった。彼の紫と黒のC-GEAR「テックマスター」は、他のものとは明らかに違う形状をしている。


「おや?タクミさん、今日は新しいシステムのテストですか?」


整備班のモッくんが興味深そうに覗き込む。タクミは無言でうなずくと、起動シークエンスを開始した。


「バイト、プロトコル・ベータ実行」


機械的な声のAIが応答する。次の瞬間、訓練室の光景が一変した。デブリの軌道予測線が空間に浮かび上がり、タクミの動きに合わせてリアルタイムで更新されていく。


「あれは...独自開発のホログラム解析システム?」アリスが目を細める。


タクミの捕獲は、アリスとは対照的だった。無駄な動きは一切なく、すべてが計算されつくしたかのような精密な動き。


「捕獲完了。データログ、保存」


淡々と告げるタクミに、ミライは圧倒されていた。


「私にも、あんな風にできるんでしょうか...」


不安げな声に、ケンイチが応える。


「君なりの戦い方が見つかるさ。それより...」


振り返ると、ミライは既に訓練室の窓を磨き始めていた。


「誰かこの子を止めてくれ...」


ケンイチの溜息を横目に、アリスは楽しそうに笑う。タクミは新たなデータ入力を始め、整備班のトリオは賑やかに議論を始めた。その光景を見ながら、ルナは静かにつぶやいた。


「ミライ、あなたの特別な才能は、きっとすぐに目覚めるわ」


窓磨きに没頭するミライの背中には、確かに何か特別な輝きが見えた。それは、宇宙を夢見る少女の、純粋な想いの光だった。

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