第2話初めてのC-GEAR



「これが、私のC-GEAR...」


訓練センターの装備室で、ミライは息を呑んだ。目の前には青と白のツートンカラーに輝くスーツが、まるで彼女を待っていたかのように佇んでいる。


「スターキャッチャー。君専用にセッティングされたデブリ回収装置だ」


突然声をかけられ、ミライは慌てて振り返った。そこには黒田ケンイチが立っていた。


「さっそく起動してみようか。ただし、気をつけることが一つ。このスーツには―」


「まずは掃除しないと!」


ミライは既に装備室の掃除道具を手に取っていた。


「いや、違う。そうじゃなくて...」


ケンイチが制止する前に、ミライは勢いよく装備室の床を磨き始めていた。周囲の新人たちは唖然とする中、一人だけくすくすと笑い声が聞こえる。


「面白い子が来たわね」


アリス・チェンだ。彼女は優雅な仕草でミライに近づくと、肩を叩いた。


「掃除の前に、パートナーに会わないと」


「パートナー?」


その瞬間、C-GEARが淡い光を放ち、小さなホログラムが現れた。少女の姿をしたAIが、ミライの目の前で優しく微笑んだ。


「初めまして、ミライ。私はルナ。あなたのパートナーAIよ」


「わっ!」


驚いて後ずさったミライは、掃除用バケツに躓いて転びそうになる。しかし、咄嗟にC-GEARが起動し、体を支えた。


「ほら、こんな風にね。私たちはこれからずっと一緒よ」


ルナの声は柔らかく、まるで昔からの友人のよう。ミライは思わず目を輝かせた。


「すごい!でも...このスーツ、お掃除しても大丈夫ですか?」


「まったく」ケンイチは頭を抱えた。「とにかく、基本訓練を始めよう」


訓練室に移動すると、そこには巨大なシミュレーター空間が広がっていた。


「では、最初の課題。目の前の模擬デブリを回収してみて」


ケンイチの声に従い、ミライは腕を伸ばした。しかし、


「あれ?どうやって動かすんでしょう...」


「ミライ、イメージして。掃除機でゴミを吸い取るように」


ルナのアドバイスを聞いて、ミライは目を閉じた。教室の隅のホコリを丁寧に取る時のように...。


突然、C-GEARが青く輝き、模擬デブリに向かって光の網を放った。


「やった!取れた...え?」


歓声を上げた直後、制御を失ったミライは宙返りを始めてしまう。


「きゃーーー!」


訓練室に笑い声が響く中、ケンイチは小さくつぶやいた。


「まあ、初日としては上出来だ。彼女なら、きっと」


回転を続けるミライを見つめながら、アリスは楽しそうに言った。


「これは面白くなりそう。ねえ、タクミ?」


黙々とデータを記録していた山下タクミは、初めて顔を上げてつぶやいた。


「要改良点が27箇所。でも、素質はある」

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