SPACE SWEEPERS - スペーススイーパーズ -宇宙(そら)の掃除屋、始めました。-
ソコニ
第1話小学校の掃除当番から宇宙まで
「宇宙のごみを、一つ残らず片付けます!」
採用面接でそう宣言してから3ヶ月。澤村ミライは今、アストロクリーン社の入社式に臨んでいた。会場の最前列で背筋を伸ばす彼女の横では、他の新入社員たちが小声で話している。「宇宙掃除」という珍しい職業に就くことへの期待と不安が、場の空気を微妙に揺らしていた。
「では、新入社員代表の挨拶です。澤村ミライさん、お願いします」
突然の指名に、ミライは一瞬だけ戸惑ったが、すぐに立ち上がった。壇上に向かう途中、彼女の脳裏には小学5年生の時の記憶が鮮やかによみがえる。
「掃除には魂が宿る」と語る中村先生。放課後の天体観測で初めて見た星空の美しさ。そして、先生が教えてくれた衝撃的な事実―宇宙には増え続けるゴミが漂っているということ。
「私は、小学校の掃除当番から宇宙を目指しました」
会場にいる誰もが、思わず顔を上げた。
「教室の隅のホコリも、宇宙のデブリも、誰かが片付けなければなりません。地球の環境を守るように、宇宙の環境も守らなければならない。それが、人類の次の使命だと信じています」
ミライの真摯な表情に、会場の空気が変わった。最前列では、人事部長が小さくうなずいている。そして、後方の扉から静かに入ってきた一人の男性が、腕を組んで彼女の話に聞き入っていた。
デブリハンター統括責任者の黒田ケンイチ。後にミライの直属の上司となる彼は、この時すでに確信していた。この「掃除好き」な新人は、きっと宇宙を変えていくだろうと。
式典後、ミライは自分のデスクに案内された。窓からは発射場が見える。机の上には一通の封筒。開くと、中から一枚の写真が現れた。小学校の校庭で撮った天体観測の記念写真。中村先生からの励ましの言葉が添えられている。
「宇宙を守る―その夢を、誇りにしなさい」
ミライは写真を胸に、深く息を吸い込んだ。明日から始まる訓練に向けて、心が高鳴るのを感じていた。
その時、彼女はまだ知らなかった。これから出会う仲間たち、待ち受ける試練、そして宇宙での予想もしない冒険のことを。
「よーし、まずは自分のデスク周りから、ピッカピカにしちゃいますか!」
掃除道具を取り出したミライに、周囲の先輩社員たちは思わず苦笑した。宇宙に行く前から、彼女の「掃除伝説」は始まっていた。
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