第5話 エルフの村にて
「おい!ニンゲン!エレナに何をした!?」
村に着くなり開口一番エルフ族の初老っぽい見た目をした男が杖を構えて俺にそう怒鳴ってきた。
「誤解です!」
俺がそう叫んだ直後
「お父様杖を下ろしてください!この方は私の命の恩人です!」
エレナさんがそう訴える。しかし
「可哀想に.......洗脳の魔法でもかけられたのか.....」
男に話を聞く気は無いらしい。
すると男の持っていた杖の先が青白く光始めた。
「やめて!お父様!」
エレナさんの訴え虚しく、男の構えた杖の先から大きめの尖った氷を俺の頭めがけ正確に放った。
ビキビキビキ
額にぶつかった氷はまるで岩が砕けるときの様な大きな音を出しながら真っ二つに割れた。
もちろん俺には傷一つついていなかった。
「「「!?!?!?」」」
エルフ族の男とエレナさん含め一部始終を目撃していたエルフ全員驚いていた。
「とりあえず落ち着いて俺達の話を聞いてください」
そう説得し、ここに来るまでに何があったかエレナさんから全て説明してもらった。
「エレナの命の恩人である貴方様に私は何たる無礼を......本当に申し訳ございませんでした......」
そう深々と土下座をし俺に謝罪しているのはさっき俺に氷をぶっ放して来た男であった。
「申し遅れました。私はエレナの父親でこの村の村長をしているアルバン・ベルナールと申します。私に償えることがあれば何なりとお申し付けください.....」
とても申し訳なく思っているのか俺に対しての態度がとても丁寧になっている。
「頭を上げてください!ほら全然大丈夫ですよ傷一つ無いですし」
「貴方様はなんと慈悲深いのでしょうか....この罪深い私を許してくださるとは.....しかし!何かお詫びをせねばこのベルナールの名が汚れてしまいます!何かお詫びをさせてください!」
「...........」
俺はしばらく考え
「では、この村にしばらくの間住まわせて頂きたいのですが.....」
「お任せください!今すぐ空いている宿を手配いたします!」
こうして俺はしばらくの間このエルフ族の村に住まわせてもらうことになった。
──夜──
「これよりツトム様歓迎の宴を始める!皆の者コップを持て!」
皆がコップを持ったのを確認すると
「乾杯!」
村長グラスをあげ叫ぶ
「「「乾杯!」」」
皆も合図に続けてそう叫ぶ。この文化は人間もエルフも変わらないらしい。
「いやはや、あの時は驚きましたぞ〜」
少し酒を飲んだ村長が話しかけてきた
「なんと私の魔法を受けても傷一つつかないなんて少し自信をなくしましたぞ」
そう笑いながら村長は言った。
「いやいや、”村長”の魔法の威力も強かったですよ」
俺も笑顔で村長にそう返す。
「”村長”なんて堅苦しい呼び方じゃなく、私は呼び捨てで呼んでもらって構いませんよ」
「じゃあこれからよろしく!アルバン」
「こちらこそ」
こうして楽しい夜は明けていった。
「ふぅーーー.......俺、お酒飲んだの初めてだな」
宿のベッドに横たわりそうボソッと呟いた直後、
コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します....」
部屋を訪ねてきた人の正体はエレナさんだった。
「今日は私を助くれて本当にありがとうございました」
「こちらこそ、お父様を説得してくださってありがとうございました”エレナさん”」
「その.....私もお父様のように呼び捨てで呼んでもらって大丈夫ですよ?」
「じゃあそうさせてもらうよエレナ」
そう言うとエレナは長い耳を真っ赤にしながら
「おやすみなさい////」
そう言い残し部屋を出ていった。
『エレナもお酒飲んだのかな』そんなことを考えながら目を瞑っていると、いつの間にか寝てしまっていた。
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