第4話 エルフの少女
──かつてこの世界を支配し人類を脅かしていたある1人の恐ろしい魔王がいました。そんな魔王から世界を救うため別の世界から1人の青年が召喚されました。
その青年は辛い修行の日々を乗り越え、”努力する者”
というスキルを手にすることが出来ました。
青年はこのスキルを活かし更に強くなりました。
”強くなり過ぎた”青年はたった1人で魔王を倒しに向かいました。
すると3日もしない内に青年は街に帰って来ました。誰もが『魔王と戦う前に逃げて来た』そう思っていました。しかし青年の手には魔王が首にぶら下げていた薄気味悪いネックレスがありました。
青年は魔王を倒すことに成功していたのです。
こうして青年は後に勇者と呼ばれるようになり、勇者のお陰で人々は魔王の支配から解放され平和に暮らせるようになりましたとさ──
「.......努力する者ってそんな強いスキルなのか?...」
マリーさんが持ってきてくれた勇者に関する童話によると、かつての勇者は努力する者によって魔王を遥かに上回る力を手に入れたと書かれていた。
「このスキル...実はとんでもなく凄いんじゃないか?......」
そう思った俺はそのスキルについて、さらに詳しく調べることにした。
──1時間後──
「なるほど、大体分かったぞ」
俺のスキル、努力する者は未だ謎多きスキルらしいが解明されている事もある。
1つ、異世界召喚者であること。
2つ、強くなりたいと心から願うこと。
3つ、常人では耐えられない量の”努力”をすること。
この3つの条件を全てクリアした者にしかこの努力する者というスキルを習得することが出来ないらしい。
そして努力する者の効果、それは、ステータス上昇の補正であった。まぁそれは予想通りで、驚いたのはこのスキルは”成長”するという事だ。
「スキルが成長する?」
通常スキルは獲得した時点でそこからは変わらないのが定石であるが、このスキルは違うらしい。
このスキル自体にレベルが存在するようなのだ。
「じゃあ俺はまだまだ強くなれる!?」
俺は更なる高みを目指し努力することを決めた。
──「っっと、行き過ぎる所だった」
俺はスキルを一通り調べ終わった後、速攻拠点としている洞穴へと帰ってきた。
「スキルの事も調べれたし、日課のゴブリン狩りといきますか」
早速ゴブリン狩りに向かおうと思い森の奥に潜ったが、何だかいつもと様子がおかしい。すると
「 キャーーー!!!」
森の更に奥から女性らしき声の悲鳴が聞こえた。
俺は急いで声の聞こえた場所に向かうと
「グォォォォ!!」
毎日俺が倒しているデカめのゴブリンに長めの金髪の少女が襲われていた。少女はその場にへたりこんでいて次の攻撃を躱せそうにない。
「おりゃ」
俺はいつも倒しているように背後から近づき、頭部を木の棒で少し力を入れて叩く。
「.........」
一撃でデカゴブリンはピクリともしなくなった。
「え、え、え?」
少女はとても困惑して、まともに言葉を話せていなかった。暫くして少し落ち着いた少女は
「先程は、助けていただきありがとうございました。私は近くのエルフ族の村のエレナ・ベルナールと申します。」
と、礼と自己紹介をしてくれた。エレナさんはエルフ族らしい、確かに耳が長く尖っている。
「ご丁寧にどうも。俺はミツヤ・ツトムです。よろしく」
エレナさんが美人過ぎてついスカした態度をとってしまい恥ずかしく思っていると
「ッッ.....」
よく見るとエレナさんは脚から血を流して立っているのがやっとのような状態だった。
「大丈夫ですか!?」
俺は心配になりつい大声を出してしまった。
「ええ....大丈夫です。ご心配おかけし申し訳ございません.....自分の村に帰れば治療できますので.....」
しかし、エレナさんの顔はとても痛がっている様子で大丈夫には見えない。
「村まで俺が送って行きましょうか?」
俺がそう尋ねると
「いえいえ!命の恩人にそのような迷惑をおかけする訳にはいきません!」
「ここから村までの距離は?」
また俺が尋ねる
「歩いて3日ほどです.......」
「じゃあ尚さら俺が送っていくよ!今の君のその脚じゃまたモンスターに襲われたら今度こそ終わりだろ?」
俺がそう聞くと考えて
「本当によろしいのですか?その.....3日間もご迷惑をおかけして.....」
「全然いいって!多分3日もかかんないし」
「???」
エレナさんがキョトンとした顔をした。
「とりあえず俺の背中に乗ってもらっていいですか?」
俺がそう聞くとエレナさんはコクンと小さく頷いて、恐る恐る俺の背中に乗った。
「村の方向はどちらですか?」
「向こうの方です」
エレナさんが指を差した方を向き
「舌を噛まないようにしてくださいね!」
俺はそう言うと全力で真っ直ぐ走った。
沢山の木を避けつつスピードとエレナさんを落とさないようにしつつ走った。
「キャーーー!!」
エレナさんはそう悲鳴をあげるものの舌を噛まないように必死に耐えていた。
走り続けること10分弱、エレナさんの村に到着した。
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