第3話 勇者ヨシダ・ユウキ

──2年後──

「9998! 9999! 10000!」

「ふぅー、、、今日のノルマもこれで終わりだな」

半年間毎日トレーニングとレベル上げを欠かさなかった俺は目に見えて大きな成長を遂げていた。

こんなに筋トレをしているのにも関わらず、俺の見た目はあまり変わっていなかった。確かに筋肉は付きガッシリとしたが、ボディビルダーの様な体つきにはならなかった。その分ステータスがあの頃と比べ有り得ない程上がっていた。

Lv.90

体力:7000

パワー:7000

スピード:7000

防御:7000

魔力:1000

幸運:100

自分でも有り得ないと思う。正直凄く驚いているが、この急成長は恐らく途中で得た”あのスキル”の

お陰だろう。”あのスキル”とは

<努力する者>

入手条件はこの世界である一定の量の努力をした者に与えよられるスキルらしいが、まだあまり詳しい事は分かっていない。ただ1つ分かっているのはこのスキルが俺のステータス急上昇の原因だということだ。

俺は自分のスキルやこの世界について全くと言っていいほど理解していない。

「1度街で俺のスキルや魔力と幸運のトレーニング法も調べてみるか。」

そう思いたったが吉日、俺はさそっそく自慢の脚であの因縁の街へと向かった。

あの頃の俺は何時間も走ってここまで来たが今となっては数分で行き来できるまでに成長していた。

自分の成長に感動する間もなくもう街に着いてしまった。門番が居たが一瞬の隙を突いて走って正面突破した。

「よし、先ずは情報収集だな!」

早速、街の酒場に行ってみる。

「昨日、召喚された勇者たちが全ての訓練が終わったってよ」

「い〜よな〜勇者達は元々チートスキルがあるんだから。」

男2人組が酒場で楽しそうに談笑している。

成程、アイツらはある程度の成長を遂げたらしい。

『俺より強くなっていたらどうしよう』少々不安に思いつつも、もう少し男2人組の会話を聞いてみる。

「俺も何でもいいからスキルが欲しいぜ」

「おいおい馬鹿言うなよ、スキルなんて死ぬ程努力しないと手に入らないぞ?」

「それでも!俺は!スキルが欲しいんだよ!」

「そんなにスキルが欲しいなら街の外れにある大図書館に行くのがいいぞ。そこなら色んなスキルについて調べられる。」

なんと運の良いことか、その大図書館とやらに行けば俺の”努力する者”について何か手掛かりを見つけることが出来るかもしれない。

俺は早速その2人組に声を掛け

「その大図書館って何処にあるんだ?」

そう尋ねると

「俺らも今から行くところだから一緒に来るといい。案内しよう。」

なんて良い奴らなんだ。俺は久しぶりに人と話した嬉しさとこの2人組の人の良さに感動しつつ、2人と一緒に大図書館に向かうことにした。

──「着いたぜ!ここが大図書館だ!」

そこには俺らの居た世界の図書館とは全くもって別物のまるで聖堂の様な大きな建物だった。しかし、中に入ってみると辺りを見回す限り本、本、本。

この大量の本の中から俺の目当ての本を探すのは苦労しそうだ。

「じゃあ!俺らは俺らで調べたいことがあるから!兄弟も目当ての本見つかるといいな!」

本当になんて良い奴なんだ。俺は2人に深々とお辞儀をし目当ての本を探し始めた。

「うーーん、、、、見つからないな」

かれこれ1時間くらい探しているが俺のスキルについて書かれている本は見つかっていない。

「どぉ〜んな本をお探しですかぁ?」

声のする方を

向いてみるが誰もいない。動揺しているおれを見て

「下ですよ下ぁ〜」

目線を落としてみるとそこには小柄で髪が所々クネクネしていて目も髪で完全に隠れている女の子がいた。

「申し遅れましたぁ〜私はぁこの図書館のぉ管理をしているぅ、マリー・エメルダとぉ申しますぅ〜」

ダウナーな感じで話し方にとても癖がある人が来たなと思い、それと同時にこんな小さな子が図書館の管理人なんて凄いなと驚いた。

「それじゃあ、<努力する者>って言うスキルについて書かれている本ってありますか?」

「そぉんなのぉ、聞かなくてもぉ分かるじゃないですかぁ〜」

「???」

そんなに有名なスキルなのか?と困惑しているとマリーは続けた

「そのスキルはぁ、かつてこの世界を魔王から守ったと言われる伝説の勇者、”ヨシダ・ユウキ”のスキルですよぉ」

名前を聞く限りその”ヨシダ・ユウキ”という勇者も俺らと同じ世界から来たのだろう。

「そのスキルをぉ詳しく知りたいならぁ〜、”勇者物語”って言う童話でぇ詳しく書かれていますよぉ〜、ただ今ぁお持ちしますねぇ〜」

そう言うとエメルダさんはパタパタと可愛らしく走って本を取りに行った。

「このぉ本ですねぇ〜、それではぁごゆっくりぃ〜」

そう言うとエメルダさんは大量の本の中に紛れる様にすぐ見えなくなった。

「不思議な人だったなぁ」

そう呟き早速本に目を通してみた。












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