6 名探偵のアイデア(却下)
だがノーラの言いたいことも分かる。
普通に考えたらお尻を水で洗うとなると、桶に水を張ってお尻を突っ込むか、あるいはお尻に水をぶっかけることになるだろう。
どちらも遠慮したい。
この世界の文明レベルでも実現可能な原始的な手段は無いだろうか?
要は水が小さな噴水のように噴き上がればいいのだ。
例えば天井辺りに水タンクを設置してパイプで便座のところに引っ張ってきてやれば、逆サイフォンの原理で水は噴き上がるはずだ。
水の噴き上がりが足りなければ、パイプの太さや、噴出孔の大きさを変えたり、水タンクの設置位置をさらに高くすればいい。
パイプの途中に弁を設置して、レバーで開閉させれば、オンオフも可能だろう。
非常にいいアイデアに思えたが、設置型である以上、便座に座ること自体が危険な現状では、私の役には立たない。
必要なのはおまるでも使える携帯型だ。
水が噴き出す携帯できる機構。
すぐに思いついた。水鉄砲だ。
だがフランソワーズの記憶に該当するおもちゃは無い。
鉄砲というものの存在自体を知らない。
もちろんこの世界の言葉で水鉄砲と伝える単語も私は知らない。
「手に持てるくらいの大きさで水がぴゅーって出るものってなにか無いの?」
「如雨露では駄目なのですか?」
質問に質問で(略)
いや、案外それでいいのか?
洗浄便座の水圧は外出先でも最強にして帰るケツ穴テロリストを自認している私だが、最弱の水圧でも洗浄はできる、はずだ。たぶん。私は詳しく無いが。
如雨露の穴をひとつだけ残して他を塞いでしまえば、それっぽくはなるはずだ。
あとは水圧が足りるかどうか。間違いなく物足りないが、今はそこは問題では無い。
ノーラに説明すると、レオニーが使いに出ることになった。
しばらくして帰ってきたレオニーはすでに中央のひとつを残して穴が塞がれた如雨露を持ってきた。
庭師に事情を話したら――話すなよ!――、さくっと工作してくれたらしい。
私は顔も覚えていない庭師と顔を合わす機会があるとしたら、どんな顔をすればいいのか分からない。
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