第3章:田舎町での新生活

北方の村、メープルウッドに到着するまでに3日かかった。


馬車で揺られながら、だみんちゃんは現代の豪邸での生活を少し懐かしく思い出していた。


「ここが、メープルウッド村(中目黒)です」


馬車から降りただみんちゃんの目の前に広がったのは、のどかな田園風景。

赤茶色の屋根が連なる家々、石畳の通り、そして遠くには緑豊かな森が見える。


「ここなら誰も文句言わないし、のんびりできそう♪」


村長の紹介で、森の近くの小さな家を借りることができた。

庭には薬草を育てられそうなスペースもある。


家賃は金貨1枚で3ヶ月分。残りの金貨で必要な道具を揃えることにした。


「錬金術...か」


だみんちゃんは現代で学んだ魔術の知識を振り返る。

この世界の錬金術は、魔法よりもずっと複雑で理論的な技術だった。


しかし、それは逆に現代科学の知識が活きる分野でもある。


「化学反応の原理は同じはず。あとは、この世界特有の素材との相性を研究していけば...」


最初の一週間は、村の周辺の薬草を調査することから始めた。


現代にある植物に似ているものも多いが、全く見たことのない種類もある。

それらを丹念に記録し、性質を調べていく。


「あら、だみんちゃんさん。今日も薬草集めですか?」


近所のおばあさんが声をかけてくる。

村人たちは、よそ者のだみんちゃんを温かく受け入れてくれた。


「はい!新しい薬を研究してるんです」


だみんちゃんの錬金術の腕は、徐々に村人たちの間で評判になっていった。

風邪薬や傷薬は、現代の知識を活かしてより効果的な処方を作ることができた。


「この青い花と、赤い実を組み合わせれば...」


実験を重ねるうちに、だみんちゃんは現代科学と異世界の錬金術を融合させた独自の技術を確立していく。


魔法に頼らない新しい治療法は、村人たちの健康を支える重要な存在となっていった。


「今日も良い天気。午後は新しい調合を試してみようかな」


窓から差し込む朝日を浴びながら、だみんちゃんは幸せそうに微笑む。


追放されたことが、むしろ彼女にとっては理想の生活への第一歩となったのだ。


魔法は使わないと決めたものの、持ち前の魔力は錬金術の研究に大いに役立った。

触媒として使うことで、より純度の高い薬を作ることができる。

それは、この世界ではまだ誰も思いつかなかった画期的な方法だった。


「さて、今日も適度に頑張りますか」


のんびりとした田舎暮らしの中で、だみんちゃんの新しい才能は、静かに、しかし着実に花開いていくのだった。

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