第3話2人の生活の柄

3日間かけて、日本の中部国際空港に到着した。

ロビーには、日本の運送業者の担当が立っていた。

Jー033サンタクロースと赤鼻はバレないようにサングラスとマスクをして行動した。

「これはこれは、Jー033様、お疲れ様です。では、こちらへ」

と、カートにJー033と赤鼻は乗り、運送業者のハイヤーに乗って、本社に向かった。

2人は担当者のゴマすりを無視していた。

本社に到着すると、社長と従業員全員が立って待ち構えていた。

「これはこれは、Jー033サンタクロース様、お待ちしておりました」

「話しは、後で。飲みたいなあ」

「左様ですか、おいっ、山本、例の料亭に電話を入れてくれ、今から行くと」

「は、はい畏まりました」

と、山本はスマホを取り出した。

たった1日で数十億円の利益を得る事の出来る社長は興奮気味に、

「今夜のお夜伽はどう致しますか?」

「オレは要らねぇや。赤鼻も同じだから。さっそくだが、君の会社の様な中堅の業者に選定したのは何故だか分かるかい?社長さん」

「……何でしょうか?」

「社長さんにも、従業員の皆さんにもクリスマスプレゼントを与えるんだ」

「あ、ありがとうございます」

「もうね、こうなったら、作者かみさまはオレを名古屋市ばっか送るだろうから、これからも宜しくね」

「はい」


「社長、連絡致しました」

「さ、Jー033様、どうぞお乗り下さい」

033と赤鼻、社長、山本はハイヤーで料亭「なだ千」に向かった。


食事しながら、

「社長、別途料金は払うが、配達の際、子供達が我々サンタクロースを信じているかアンケート用紙も配って欲しい。アンケート用紙はこっちで用意したから。印刷代はかからないよ」

「畏まりました」

「じゃ、オレ達は疲れたのでホテルに行きたい。手配してある?」

「はい、名古屋バリトンホテルのスイートルームを押さえてあります」

「じゃ、そこに運んでよ」

「はい。おいっ、山本車回せ」

「はい」

033と赤鼻はバリトンホテルに向かった。


さすが12月。サンタクロース国より寒さは弱いが、それでも寒いと感じた。


「パパ、いつまで歩くの?」

「もうちょいだ」

40代の男と、小学生の男の子は手を繋いで歩いていた。

男は、大きなリュックと毛布を持っていた。

2人が到着したのは、ハンバーガーショップ。

「いらっしゃませ。ご注文はお決まりでしょうか?」

「ハンバーガー1つ」


荷物を置いた男は、1個のハンバーガーを持って、子供が待つテーブルに戻った。

「やった、今日はハンバーガーだ」

「飲み物は水筒に水が入ってる。食べなさい」

「パパのハンバーガーは?」

「パパはいいんだ。お腹いっぱい」

子供は、夢中でハンバーガーを食べる。多分、小学低学年であろう。


3分で子供はハンバーガーを食べ終えた。余程、お腹を空かせていたのだろう。

水筒の水を飲む。

片付けて、2人はまた歩き出した。


「パパ、今日はどこで寝るの?」

「そうだな、公園へ行こう」

「公園?」

「少し、ブランコにでも乗るか?」

「うん。パパが押して」

「いいとも」


2人は街外れの公園でブランコで遊び、寒くなってきたので、公園の多目的トイレに段ボールを敷き、2人して毛布に包まり寝た。


男は2週間前に家族寮を追い出された。派遣の仕事をしていたが、業績悪化の為に解雇されたのだ。

その時、一緒に住んでいた妻は、銀行通帳と印鑑、カードを持って家を出て行った。

他に男がいる事は知っていた。

だから、財布の中には5000円しか入っていない。

息子は児童保護施設に預けようとしたが、泣きじゃくり今の生活を送っていた。

12月に、子供の面倒を見てくれながらの会社の仕事は無く、兎に角、仕事を探していた。

寮付きの会社を。だが、派遣の仕事も埋まっている。

男はもう3日間水と味塩だけで過ごしていた。


街のクリスマスシーズンのイルミネーションがやけに厭味ったらしい。

息子は寝息を立てていた。毛布を掛け、その上からさらに、自分のダウンジャケットを乗せて、公園の水を水筒にいれて、水をイッキ飲みした。それを3回繰り返した。


そして、朝を迎えると、2人は図書館に向かった。図書館は暖かい。

夜の7時まで時間を潰すのだ。

後2週間もすると、クリスマス。この子にクリスマスプレゼントを贈りたい。

しかし、仕事を見つけなくては。

駅で電車には乗らずに、無料の求人誌を手にして仕事を探した。

朝ごはんと昼ごはんを兼ねて、息子におにぎりを2つ買って食べさせた。

男は無心におにぎりを食べる息子を見て、哀れんだ。

自分は父親失格だと。

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クリスマス・ラプソディーSeason3 羽弦トリス @September-0919

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