おまけ③

ポッキーの日(2024年11月11日アップ)


*キスのみ、高校の時の話




「今日はなんの日でしょうか!」

「知るか」

「ポッキーの日でーす!」


いきなり教室にやってきた由宇が、俺の机にポッキーを数箱置く。


「ねね、ポッキーゲームしましょう?」

「はぁ?」


ポッキーゲームってアレか、恋人同士でポッキー食べあって…みたいな。


「ぜってーやだ」

「えーそんなこと言わないでくださいよ❤!」

「やだっつってんだろ!!」

「むー」

「…しかしお前ほんとそういうの好きだよな」


ポッキーの日とか、何とかの日だとか、由宇はとにかくイベントを大事にしたがる節がある。


「らっへへんはいほふぉふぉいへ…」

「食い切ってから言え」

「ごくん。だって先輩と思い出作りたいし」

「別に今じゃなくてもいいだろ」

「やですー!今は今だけなんですから!」

「………そうだな」


俺は三年、こいつは二年。

外は少し肌寒くなってきた。

俺と由宇が同じ学校に通えるのも、あともう少しだけ。


「由宇」

「なんですか?」


由宇の持っていたポッキーの袋を奪って口に挟む。


「ほら、してやるよ」

「先輩……っ!」


カリカリとお互いポッキーを齧り、唇と唇が重なった。


「ん…」

「んっ、由宇」

「ふっ、ちゅ、ちゅっ」

「ちゅう、ちゅうっ」


ここが学校だというのも忘れて、キスを繰り返す。


「ポッキーゲームも悪くないでしょ?先輩」

「……まぁ、そう、だな…」


残ったポッキーは俺の妹と弟たちにあげた。



***



「じゃーん!今日はポッキーの日でーす!」


由宇がポッキーの風船を叩きながらリビングの扉を開けた。


「毎年毎年よく飽きねぇな」

「この日になると、千紘とポッキーゲームしたあの日を思い出すんだよねー」

「……まだ覚えてたのか」

「千紘だって覚えてる癖に」

「煩い」


今日のポッキーは、イチゴ味。

甘酸っぱい思い出が蘇った気がした。

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【短編】今日も明日も ティー @daidai000tt

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