今と未来と#3

「お泊まりすればいいのに」

「急すぎんだろ」

「おじゃましました。あの、凄く楽しかったです」

「よかったよかった。あの子たちも高崎君のこと気に入ってるし、またおいでね」


賑やかな緒方家を離れ、帰路につく。

先輩が駅まで送ってくれるとの事で、甘えることにした。


「騒がしくて落ち着かなかったろ」

「全然ですよ。うちはああいうのじゃないので、羨ましいです」

「そっか」

「田中さんとメイドさんとは普通に話すけど、やっぱり親とは違うから、気は使いますよ。って俺暗い話しちゃいましたね」


両親は仕事人間だから、ほとんど顔を会わせた記憶がない。

今裕福なのは勿論二人のお陰だけど、その分家族らしいこ事をしたかと言われると答えはノーだ。

だから、ああいう普通の家庭が、凄く羨ましい。


「まぁ、何だ。その……アレだ」

「?」

「あーもう!!」


ちゅ

何をされたかわからなくて、固まってしまった。


「だから!俺は!ちゃんと、お前の、その……………いつでも、傍にいる、から……………」

「千紘…」

「だから、もう無視とか、そういうのは……」


先輩が俺の制服の袖をきゅっと掴む。

その手は少し震えていた。

寒さではなく、不安や悲しみ。


「千紘。もう二度とそんなことしないから。好き、愛してる」

「由宇……俺も、俺も好きだ、愛してる」


四月、まだ夜風は少し冷たい。

しかし二人の心は暖かさを取り戻した。

これからの未来を思い描き、二人は歩み始める。

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