第4話 種族の壁①

服屋を出る頃には、歩道を照らす光キノコが薄闇を払う時間帯になっていた。

「綺麗ね〜」

隣を歩くヴィロミアが周囲を見渡しながら呟く。足元を照らす階段キノコ、地面から触手のように伸びるもの、壁から突き出したものーー街中のキノコたちが一斉に輝き出す。

「どの光キノコが一番気に入りました?」

せっかくだからと尋ねると、ヴィロミアは少し考えてから答えた。

「あの上にある網状に広がったやつかしら」

そう言って、身長の倍はありそうな高さの棒の上から垂れているキノコを指差す。

「あ〜、蜂の巣みたいなやつですね。珍しい形ですよね」

そのキノコは、蜂の巣を薄くカットして球状に固めたような独特の形状をしていた。


「夕食はどうします?」

お腹が空いてきたので切り出すと、ケレアニールが振り返る。

「こっちに来てからキノコ料理ばかりだったから、違うのが良いかも」

いろいろな意味で「どうする?」のつもりだったが、返事からして四人で外食する流れのようだ。

「じゃあ焼肉とかどう?メーケの好きな『サラマンダーの息吹』が近いし」

ウィローラの提案に全員が頷く。


「その店、好きなの?」

ヴィロミアが尋ねてくる。

「あそこ、いいですよ〜。各テーブルにサラマンダーの頭部がそのまま設置されていて、そこから出る直火で焼くんです。その無骨さが、なんというか、味わい深いんです」

「見て楽しめるやつね」

ヴィロミアが良い感じの合いの手を入れてくれるので話しやすい。

「そうなんですよ。あと、何より肉の鮮度が良いんです!普通は冒険者が持ち帰った肉をギルドが買い取って流通させますけど、ここは冒険者と直接契約していて、しかも輸送用のグリフォンまで飼ってるので、新鮮な肉がすぐ届くんですよ」

「そうなのね〜」

ヴィロミアの視線が先ほど通り過ぎた幻覚キノコバーに向かっているのがわかる。三度見していたから、相当気になるのだろう。

とはいえ、そんな彼女を前に熱弁する私の方が恥ずかしくなるじゃないか......

「鮮度は大事よね」

雰囲気を察したのか、ヴィロミアが合いの手を追加する。まあ、語りたい気分だから問題ないけど。

「あとはタレの入れ物がキノコでして。最後のシメに肉汁の染み込んだそのキノコを焼いて食べるのが最高なんですよ」

そんな話をしているうちに、店の前に到着していた。

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