第2話 パーティーメンバー①
約束の12時より少し早めに「精霊の木漏れ日亭」に到着した。この店はウィルドラエがよく指定する場所なので、道順は覚えている。
外観は巨大な一本の大樹で、その内部を削り出して店として利用しているのが特徴だ。
根元にある扉を開けて中に入ると、木の良い香りが鼻をくすぐり、自然と心が和む。
正面の受付に仲介屋の名を告げ、案内された部屋番号へと向かう。
時間に少し余裕があったので、昇降装置を使わず、螺旋階段を登ることにした。時間を稼ぎつつ、心の準備をするためだ。
階段を上りながら、いろいろな考えが頭を巡る。
初対面って緊張するんだよなするんだよな......うまく話せるだろうか。自己紹介とか苦手だし、態度のデカい人がいないといいな。そういう人を目の前にすると余計に緊張して、頭が真っ白になるからな......
そんなことを考えているうちに、三階に着いてしまった。
各階には円形状に六つの部屋が配置されており、目指すのは302号室だ。廊下を進み、部屋の前で立ち止まる。
うう、緊張する......開けたくないな。絶対注目されるし...でも、ここで迷っていてもしょうがないし、覚悟を決めるか。
観念してドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。その瞬間、部屋の中の全員がこちらを振り返るのがわかる。見知った顔が二人ーーウィローラとウィルドラエーーそして、見慣れない顔が二人いた。部屋の中央には大きな四角いテーブルが置かれ、そこには半分ほど減ったサラダの大皿やタルト、フレーバーティーのポットが並んでいる。
奥の文字盤の前に立っていたウィルドラエがこちらに近づいてきた。
私が中に入って扉を閉めると、目の前まで来た彼が小声で話しかけてくる。
「街と森、毒キノコ、危険生物について軽く説明はしておいた」とのことだった。私は感謝の言葉を伝えつつ仲介手数料を手渡す。最後に彼は、「二人ともやばいけど、特にヴィロミアさんは別格」とだけ言い残し、部屋を後にした。
残された私は注目されていることに気恥ずかしさを覚えながら一礼し、空いている席へ向かう。その席はウィローラの向かい側で、見知らぬ人の隣だった。
その人は柔らかな笑顔を浮かべて会釈を返してくれる。良い人そうでほっとしながら近づくと、その人の角に見覚えがあることに気づいた。
不純物のない透き通った透明感と、細いながらも力強さを感じさせる角。まるで朝露で形作られたつららのような美しさだ。こんな角を持つ人物はそう多くない。思わず口を開く。
「ケレアニール?」
名前を口にした瞬間、彼も微笑みながら答える。
「やっぱり、メーケシャだった。久しぶり。」
人違いではなかったことに胸をなで下ろしながら、席に腰を下ろし、短く「久しぶり」と返事をする。
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