第1話 冒険者のモーニングルーティン③
今回の目的は、パーティーを組むこと。そのため、ギルドに入った私たちは、依頼掲示板とは反対側にある森の最新情報が掲載されている場所へ向かう。そこでは、仲介屋たちが冒険者と話し込み、情報を交換する姿が見られる。冒険者たちは森の情報収集からパーティー募集、街の案内まで、様々な理由で彼らを頼っている。
今日もその一角は人だかりができていたが、目当ての人物はすぐに見つかった。彼はいつも頭に布を巻いているため、ひときわ目立つのだ。近づくと、ウィローラが声をかける。
「ウィルドラエ君」
振り向いた彼に私も軽く挨拶をし、三人で近くの椅子に腰掛けた。
ウィルドラエは丸テーブルに肘をつきながら、いつものように森の近況を簡潔に語る。こちらの要件を伝えると、ちょうどこの街に来たばかりの二人を紹介できると言われ、顔合わせの日程調整をお願いすることにした。
それで用事は済んだので、私たちはギルドを後にする。
特に予定がなかった私は、ウィローラが武器屋に寄ると言うので付き合うことにした。武器屋はギルドのすぐ近くにあり、店内は広く、賑やかだった。しかし、私はこの店に来るたびに、周囲から浮いているような居心地の悪さを感じる。竜の群れの中に一匹だけ羊が紛れているような場違い感だ。ウィローラも竜側。誰も私のことなんか見ていないことはわかっているが、どうしてもそう感じてしまう。
ウィローラは様々な武器を手に取り、感触を確かめながら私に話しかけてきた。
「メーケ、武器買わないの?」
「私はいいかな」
「いまだに教会支給のやつ使ってるよね」
「使えればそれで十分だからね」
「私はメーケと違ってチビで軽いからさ〜。ちゃんと選ばないと、逆に武器に振り回されちゃうんだよね」
「魔力で身体強化しても体重は増えないし、体格は変わらないからね」
「そういうこと」
「なら、ハンマーじゃなくて、刀とか軽いものにしたら?」
「え~でも、ハンマーが一番かっこいいじゃん!」
「それで選ぶの?」
「それが大事なんでしょ!武器は手にしたときに気分が上がるものじゃなきゃ!」
「……まあ、そういうものなのか」
その気持ちもわからなくはない。私だって、奮発して良い朝食を食べた日は気分が良くて、体がいつも以上に動く気がする。それと同じようなものだろう。気分を上げる方法は人それぞれだ。
しばらくウィローラの武器選びに付き合いながら時間を潰した後に、冒険者カードを見ると、ウィルドラエからの連絡が来ていた。
「明日の12時に妖精の木漏れ日亭に来られるか」という確認だった。
私もウィローラも問題なかったので了承の返信をし、その日はそこで解散となった。
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