第4話 勇者達の密談
「本気か!グレオル!
あの魔王の娘と結婚するって!」
猫耳の魔法使いザイルが呆れたように声を上げた。
一時的に外出許可をもらったグレオルは
近所の居酒屋で仲間にエリザローズとの
結婚が決まったことを報告していた。
オレンジ色の光が店の中を照らし、
酔っ払いの笑い声が聞こえてくる。
陽気な空気に満ちているが
当の本人はズーンという効果音がつきそうなほど
椅子の上で膝を抱えて落ち込んでいる。
「ごめんよ、みんな。僕が不甲斐ないばかりに
魔王と娘を倒すことができなかった。
そればかりかエリザローズに
婚姻を申し込まれるとは!!」
「そんなっ!
グレオルのせいではありませんっ!」
聖女エレオノーラがいかにも聖女らしく
可愛らしい声を上げる。
「いや、どう考えてもグレオルのせいだから」
賢者のアレイルは何かを考えるように
顎に人差し指を添えた。
「……逆にこれは
好機と捉えてもいいかもしれない」
その言葉に皆の視線が集中する中
アレイルは冷静に眼鏡を中指で持ち上げた。
「エルザローズと婚姻を結ぶことで
グレオルは魔王の縁者となる。
そこを突くんだよ」
「突くって?」
「察しの悪いヤツだな。
エルザローズの夫となれば
彼女と一緒に暮らすこととなる。
魔王を殺すことができなくとも
民の脅威となる
エルザローズを殺すチャンスは必然的に
多くなるわけだ。
エルザローズを倒した後に魔王に勝てば
王様と民に示しがつく。
いい案だと思わないか?」
「た、確かに!」
少しだけ元気を取り戻したグレオルだが
またすぐに項垂れる。
「で、でも、妻を殺すなんて……
僕にできるのかなあ」
「アホっ!なんでお前は
そんなにネガティブなんだよっ」
ザイルがイライラしたように頭を軽く掻きむしる。
「とにかく、お前はエリザローズと結婚して
油断した彼女を殺せ。いいな?」
アレイルの視線の圧にビビったグレオルは
思わず頷いてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます