第13話:部長の成れの果て。
「朝、言いそびれたんですけど・・・柑菜さん、そのスーツ・・・よく似合ってて
めちゃ可愛いです・・・中身が可愛いからでしょうね」
「え〜〜〜?可愛い?」
「ああ・・・このスーツね・・・ありがとう」
「そんなこと言ってくれるのライトだけだよ・・・」
ちょっとした気配り・・・お世辞でもそんなこと言われると嬉しい。
だからライトのこと憎めないんだよね。
この時点で私はライトのことが完全に好きになっていた。
迷惑な人って思ってても、それにも増して彼を好きって気持ちのほうが大きく
膨らんでいった。
少し仲良くなってもいいかな?・・・そしてほのかな恋心?
でもまだ、照れ臭くてダーリンとは呼べない・・・。
「ライト、一緒に帰りたいけど私のバイク原付だから二人乗りできないんだよね・・・ライトは・・・」
「少し歩きませんか?・・・柑菜さん」
「え?ああ、そうね、いつもブヒブヒーッて帰っちゃうから、たまには歩きも
いいかもね・・・」
「じゃ〜オフィス街抜けるまでね・・・」
「それにしても部長どこ行ったのかな?結局帰ってこなかったし・・・」
「ああ、美幸さんって人にセクハラまがいのことしてたおっさんですよね」
「そうだけど、なに?ライト・・・見てたの?」
「あまりに露骨に理不尽だったのでゴキブリに変えて差し上げました」
「うそ・・・え?給湯器の壁にへばりついてたゴキブリ・・・部長なの?」
「そうですよ・・・セクハラなんてゴキブリにも劣る行為ですからね」
「そんなことして・・・大変じゃん」
「誰かがそのゴキブリ見つけて、しばき殺しちゃったらどうすんのよ」
「しばき殺すって・・・柑菜さん、そんな怖いこと普通に言うんですね」
「じゃ〜・・・じゃ〜なんて言えばいいのよ」
「ま、いいんじゃないですか、その表現で・・・間違ってないですし・・・」
「魔法は人の前じゃ使わないんじゃなかったの?」
「あの場で見て見ぬふりをするほうが魔法使いである前に人としてダメでしょ」
「それにしたってゴキブリって・・・でも部長にはピッタリよね」
「まあ、もう今頃は元の人間の姿に戻ってると思いますよ」
「時間制限かけてますから・・・」
「戻らなくていいんだよ・・・あんなセクハラおやじ・・・」
「一生ゴキブリで過ごせばいいのよ・・・どうせ来世はゴキブリなんだから」
「柑菜さん・・・」
「あ、言いすぎちゃった・・ごめん」
「じゃあ、あの部長さん、いずれ誰かにしばき殺されますね」
「あはは・・・そうだね、でもそれはやっぱり可哀想かな・・・部長にだって
家族はいるしね」
「でもこれで、少しは懲りたんじゃないですか?」
「なら、いいんだけど・・・」
そんな話をしながら、私たちはオフィス街を抜けた。
私は光人と別れてそのまま原付でブヒブヒーッと我が家へ帰ることに・・・・。
「じゃ〜あとで、ライト」
「気をつけて帰ってくださいね、柑菜さん、それじゃ」
私が原付でブヒブヒ〜って家に帰り着くと玄関の前で、さっき別れたばかりの
ライトが私を待っていてくれた。
つづく。
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