第12話:消えたセクハラ部長。

来ちゃいけないって行ったのに、ライトは私の会社まで来ちゃった。

私のことが心配だって・・・どれだけベッタリなの?


「ライト・・・そんなところに立ってないで、こっち来て」


私は部署の応接室にライトを連れて行ってソファに彼を座らせた。


「ここなら普段誰も来ないから・・・しばらくいていいから」

「ねえ、帰らないの?」


「柑菜さんがどうしても帰れっていうなら、しかたありませんけど・・・」

「そうじゃないなら柑菜さんが帰る時まで待ちます、どうせ暇ですし・・・」

「柑菜さんが私の目の届かないところにいるのは、やはり心配です」


「過保護?」

「しかたないわね・・・じゃあ、ここで待ってる?暇だよ?」

「いいです・・・待つのは苦じゃないので・・・」


「じゃあ、お仕事終わったら一緒に帰ろ」


ああ・・・どっと疲れる・・・。


ライトが私の彼氏だって認めちゃったせいで部署内でちょっとした騒ぎになった。


美田園さんにはなんか私のこと裏切り者みたいに言われるし・・・。


「柑菜ちゃん、彼氏なんかいないって言ってたくせに・・・」

「いるじゃん・・・しかもあんなシュッとしたイケメン」

「今まで黙ってたなんて許せないっ!!」


「美田園さん・・・これには訳があるんです・・・」


で、私はライトとのことを、説明しなきゃいけなくなった。

ライトが魔法使いってところだけ覗いて・・・。

もう面倒くさいったら。

それで、多少はみんな不承不承、納得してくれたみたい。


でも、年下の大西君は私に密かに好意を持っていたみたいだからショック

だったみたい。

大西君に好意を持たれてるなんて私はちっとも知らなかったけどね。


お仕事をつつがなくこなして、そろそろ退社時間ってなってセクハラ部長が

自分のディスクにまだいない?・・・もしくは帰って来てないことに気づいた。

でもみんなが退社する時間になるまで、それまで誰ひとり気づかない。

それとも気づかないふりしてたのかな?

なんて存在感のない部長。


「あの、おっさん仕事ほったらかしてどこ行っちゃったのかしらね」

「文句言ってやろうと思ったのに・・・」


美田園さんがグチった。


「部長なんかいないほうが、いいです」

「給湯室から急にいなくなったんですよ、あのおっさん、逃げ足だけはめっちゃ

早いから・・・」


美幸ちゃんが憎たらしそうにそう言った。


「ま、いいわ・・・誰も部長になんか興味ないしね」

「明日になったら、普通におはようって顔だすでしょ」

「探すだけ時間の無駄・・・みんな帰りましょ」


だいたいは部署の中では美田園さんが仕切っていた。


「ライト・・・お待たせ・・・帰ろ」

「退屈だったでしょ・・・」


「大丈夫ですよ・・・ここにあった資料読んでましたから」


みんなに挨拶してから私ライトは会社を出た。


つづく。


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