第11話:柑菜さんの会社。

「お気をつけて・・・あとで私も会社にお伺いしますから・・・」


私はライトが言ったその言葉がめちゃ気になっていた。

来ないでって言ったけど・・・言うことを素直に聞いてくれる気がしなかった。

ライトなら私の会社の場所なんて、とっくに知ってるだろうし・・・。

でも、ごちゃごちゃ言ってたら会社に遅れちゃう。


「事故っちゃうといけないから、余計なことは考えないことにしよ」


私は羽のない原付で無事会社に到着した。


私の部署には先輩の「美田園、真理子みたぞの まりこ」さんと、可愛い系後輩男子「大西 隆平おおにし りゅうへい」君と、これまた後輩女子の「中川 美幸なかがわ みゆき」ちゃんそれに セクハラ部長の「五木 不利夫いつき ふりお」・・・あだ名はゴキブリ・・・。


それが我が部署のスタッフ。

私たちはこの部署で物品の発注とかデータ管理とか書類の整理とか、そんなことを

してる。

たまに他の部署に頼まれると営業にも行くし企画にも参加したりする。

要するに忙しくなった部署のピンチヒッターってことね。

手が足りなくなると駆り出されるわけ。


「おはよう〜」


「おはよう〜柑菜ちゃん」


そう言ったのは美田園さん。


「おはようございます、是和伊これわいさん・・・大西君と美幸ちゃんが

同時に挨拶した。

カブったふたりは顔を見合わせて笑った。


お天気もよかったし、今日も平和な1日がはじまりそうって思った。


で・・・10時の休憩の時、美田園さんが私のところに来て


「是和伊さん・・・あの〜変な男の人が部署の前でうろうろしてるんだけど・・・

でね、どちら様ですか?・・・何か用ですか?って尋ねたらね」


「柑菜さんの身内の者だって言うのよ・・・あんた身に覚えある?」


(・・・ライトだ・・・)

(来ないでって行ったのに・・・やっぱり来ちゃったんだ・・・)


「いま、その人どこにいます?」


「え?さっきまで、そこの入り口にいたけど・・・どこへ行ったのかしら・・・」


「きゃ〜〜〜〜〜〜〜」


「なに?・・・なに?今の・・・」

「美幸ちゃん?・・・」

「声がしたの給湯室ですよね、美田園さん」


「そうみたいね・・・たしかに美幸ちゃんの声よね」


美田園さんと私は、あわてて給湯機までかけつけた。

そしたら、美幸ちゃんが丸めた週刊誌を右手に持って壁に向かって身構えてた。


「美幸ちゃん・・・どうしたの?、なにしてるの?」


「あ、先輩・・・ゴキ・・・ゴキ・・・ゴキブリ・・・です〜」


「え?五木部長がどうかした?」


「じゃなくて・・・本物のゴキですよ」


「え〜ゴキブリなんて、ずいぶん見てないわよ・・・」


「って、いうかおかしいんです・・・私がお茶の用意をしていたら後ろ

に五木部長が来てて、お尻触られて今日、仕事が引けたらどこかへ行かないか

って誘われて・・・めちゃセクハラされたんですけど・・・」


「もう、やめてくださいって振り向いたら五木部長がいなくて、で、壁に

ゴキブリが・・・・」


「美幸ちゃん大丈夫?・・・」

「それにしても、あのエロ部長・・・エロおやじ油断も隙もないわね」

「逃げ足だけは早いんだから・・・どこへ行ったのかしら・・・」


「後で、私から部長に文句いっといたげる・・・許せないわ、

あのスケベおやじ・・・」


美田園さんがだいたい部長に文句を言う担当。


「あ・・・ゴキブリも、どこかへ行っちゃいました・・・」


話してるうちに美幸ちゃんはゴキブリを見失ったみたい。


「あの〜・・・柑菜さん?」


「あ、この人」


美田園さんが指差した先に、ライトがいた。


「やっぱり来たの?」

「会社には来ないでって言ったでしょ・・・・」


「柑菜さんが心配で・・・」


「そんなこと言ってたら、どこへでもついて来なきゃいけなくなるでしょ」


「柑菜ちゃん・・・誰?・・・この人・・・ってか、このイケメンさん」


「はじめまして・・・私はライトって言って柑菜さんのBF・・・」

「つまり、彼氏です・・・恋人・・・とも言いますけど・・・」


「か、彼氏・・・恋人?・・・・このイケメンが?・・・柑菜さんの?」


美田園さんは目を丸くして言った・・・。


「先輩、その人、彼氏ってそれほんとですか?」


「彼氏って・・・もうなんて説明したらいいんだろ・・・」


(カフェでナンパされて、それで家に連れて帰ってきたって?)

(私が男をあさってる女だってアピールするようなもんじゃない・・・)


「美田園さん、美幸ちゃん、これにはね深いわけが・・・」


「そんなの深くても浅くても、どっちでもいいわよ」

「この人、まじであんたの彼氏?って聞いてるの・・・イエスかノー・・・

どっちなの?」


(そんなのノーに決まってるでしょ・・・)


「イエスです」

(あはは、私バカだ・・・焦っちゃってイエスって言っちゃった)


つづく。




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