第10話:何?・・・この原付?

ライトにおデコにキスされて、私を気を失ったらしい。

そのまま、死んだみたいに寝て朝まで起きなかったみたい。


気を失った私をライトが抱っこして二階の私の部屋まで連れて行ってくれたらしい。


ライトは癒しの魔法や催眠の魔法も使えるんだ。

お仕事で疲れてる時は、超便利かも・・・。


でも、気を失わせる魔法って、めちゃ危険じゃない?

ライトがもし変質者だったら、とってもヤバくない?

唇にキスなんかされたら、どうなっちゃうんだろ?


次の朝、私は二階の部屋から降りて来ると、すでにライトキッチンテーブルの

椅子に座って、お母さんと何か楽しげに話していた。


そして私を見つけて


「おはよう柑菜さん」


素敵すぎる笑顔でそう言った。


「おはようライト・・・お母さんもおはよう」


「おはよう柑菜」


「柑菜さん、昨夜はよく眠れたでしょ?」


「ライトのおかげでね」

「今度からちゃんと言ってね、魔法使うって・・・」


「分かりました・・・驚かせてしまってごめんなさい」


「謝らなくてもいいけど・・・」


私はライトと一緒に朝食を食べて家族みたいに普通にしゃべって・・・まるで

新婚さんみたい。

って言うか、ライトが私から離れない限り新婚さんみたいなもんだけど・・・。

どうしたもんかなって思うよね。

勝手に好きになられちゃって・・・。


私もいつの間にかライトを、否応なしに受け入れてるし・・・

ライトのことは嫌いじゃないけど、まだ恋愛感情は持てない。

でも彼の好感度は私の中では上がってる。

かといって友達ってのも・・・微妙・・・恋人未満・・・ってのも微妙。


この先、私たちの関係はいい感じになっていきそうな予感はする。


ライトの私への気遣いは、まるで私だけのためにいる執事さんみたい。

あんなに私を気遣ってくれて一生懸命に自分をアピールされると気持ちが

ライトになびいてしまいそう。


それになんてったってイケメンだし・・・。

今のところ非の打ち所がないよね・・・欠点は今の所見えないし・・・。

勝手に魔法使っちゃうところを除いては・・・。


「じゃあ、お母さん私、会社に行ってくるから・・・」

「ライト・・・行ってきます」


「いってらっしゃい・・・気をつけてね、」


「お気をつけて、柑菜さん」


ライトは玄関の外まで私を見送ってくれた。

で、車庫から出した原付を見て私は固まった・・・ってかビビっちゃった。


原付に昆虫の羽みたいなモノが生えてるし・・・。

まるでバカでかいセミみたい。


「なにこれ?・・・」


「それでブーンって空飛んでいけますから・・・」


「はあ?なに言ってるの・・・」

「それに、なにこのデカい昆虫の羽みたいのキモい・・・」


「だからそれに乗って会社に行けば楽でしょ」


「そういう問題の以前に、こんなの乗れるわけないでしょ」

「乗ったこともないモノにどうやって乗れって言うの・・・」

「それに、万が一乗れたとしてもこれで会社に降りたりしたらみんなビビるでしょ」


「この世界のどこ探したって空を飛べるスクーターなんかないの・・・」

「ありえないからね・・・」

「元にもどして・・・普通に行くから」


「いいアイデアだと思ったんですけどね」


「だから・・・魔法使う時は言ってねって言ったでしょ」


「分かりました・・・よかれと思ったことでも逆効果になることもあるんですね」


そう言うとライトは、なにか呪文を唱えて原付をひょひょいと元に戻してくれた。


「余計なことはしないの・・・分かった?」

「まあ、私のためを思ってしてくれたってのは感謝だし嬉しいけど・・・」


「あ〜でも先が思いやられるわ・・・」

「じゃあ、行ってくるからね」


「お気をつけて・・・あとで僕も会社にお伺いしますから・・・」


「なに言ってるの・・・来なくていいって・・・絶対来ちゃダメだからね」

「分かった?」


「確約はできません・・・僕がついていないと柑菜さんが心配ですから・・・」


「んもう〜・・・過保護すぎだよ」

「会社遅れちゃうから行くよ・・・」

「来ないでよ・・・来ても他人のフリするからね・・・」


なに言ってるんだろ、私・・・んなこと言っちゃって・・・ライトのこと身内だと思ってる・・・彼とは、まるっきりの他人なのに・・・。


「安全運転で・・・柑菜さん」


「分かってるわよ」


つづく。


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