第7話:恋と呼ぶには、まだ早い。

「ところでライト・・・」

「まだダーリンって呼べないけどライトのままでも返事してくれるわよね」


「ウイ・・・僕は、さほど寡黙ではありませんから・・・」

「どちらかと言うとしゃべらないとクチに虫がわくタイプです」

「それにダーリンって呼ばないと返事しないって言っても、柑菜さんには

通じそうにありませんからね・・・」


「そのうち呼べるようになったら呼ぶかもしれないし・・・」


「お〜脈アリですね」


「ライトがしつこいからだよ」

「あのさ・・・聞くだけ無駄な気がするけど、今夜、泊まるところ・・」


「ありません・・・どこに泊まればいいのかもしれませんが泊まる方法も

分かりません」

「なんせ、地球へ来たばかりですからね」

「さまざまな角度から検証した結果、不本意ではありますが柑菜さんの

おうちに泊めていただくのが一番ベストと言えるのではないでしょうか? 」


「なにが一番ベストよ・・・」

「まあ、理路整然とよく言うわね」

「不本意ですって?・・・ハナっから泊まるつもりでいたんでしょ?」


「お母さん・・・ライトあんなこと言ってるけど・・・」

「泊めてあげてもいいの?」


「行くとこないんなら、しょうがないでしょ」


「見ず知らずの人だよ・・・そんなにあっさり承諾しちゃっていいの?」


「いいんじゃないの?」

「悪い人じゃなさそうだし・・・」

「ライトさんには、このソファーででも寝てもらったら?」

「まだ、あなたの部屋で一緒ってのは、早いわよね」


「なに言ってるの・・・」


「僕が柑菜さんの彼とは言え、これはデリカシーの問題ですから」

「同じ部屋と言うのは柑菜さんの承諾遺憾と言うことでしょうか。」


「またそんなこと言って・・・」


「ダーリンだのハズバンドだのって言われたらなんだか洗脳されそうだよ」

「私はまだライトの彼女になるともなんとも言った覚えないからね・・・ 」


「いいんです・・・僕が柑菜さんのことを好きでいるかぎり」

「少しずつでいいんです、僕を理解して好きになってくだされば・・・」

「僕たちには時間はたっぷりありますからね・・・ゆっくりでいいですよ」

「ただし、永遠に僕の片思いと言う結末は納得いたしかねますけど・・・」


「僕は僕の両親にかならずワイフを連れて帰るからと約束して家を出て

きましたからね」


「え〜責任重大じゃん」

「私まだ・・・なにも考えてないし、なにも言えないよ・・・」

「ライトのこと魔法使いってだけで、あなたがどんな人かほとんど知らないんだよ」


「これから知っていけばいいじゃないですか・・・」

「言ったでしょ・・・時間はたっぷりあるって」


そんな訳で、ライトは我が家に居座ってしまうことになりそう。

たぶんだけど、どこか住むところを見つけて出て行こうなんて気は、彼には

さらさらないみたい。


私からは離れるつもりもないみたいね。

ストーカーみたいだよね。

でも不思議と怖いとか変質的とかってそんな気持ちにはならないんだよね。


さすがに私と同じ部屋で寝るって言わないところを見ると、そこまで

図々しくはないみたい。

デリカシーはちゃんと持ってるんだ。


結局、今日は伊奈ちゃんと買い物に行けなかったしライトのせいで

なんだか、めちゃ疲れちゃった。


でも彼の存在は心なしか私の生活にハリを与えてくれそうな予感がする。

いい意味でトキメキに似た感覚を与えてくれたのはたしかだった。


彼は一方的だけど、そのブレない真っ直ぐな気持ちがかえって清々しい。


私の彼氏?・・・私に彼ができるのかな?・・・。

私は、たったこれだけの時間の中で光ライトを彼氏って認めちゃうのかな。

いつか彼のことをダーリンって呼ぶことになるのかな・・・。


恋と呼ぶには、まだまだ早い気もするけど・・・。


ライトは魔法使い・・・私の・・・ダーリンは魔法使い?。


実はダーリンって呼び方、それは私にとってとても新鮮な響きだったの。

普通、日本人は旦那様のことをダーリンって呼ばないからね。


つづく。



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