第2話:フルネームはラブラド・ライト・ストーン。
「今、魔法使いって言いました?」
「そうですよ」
「はじめまして・・・柑菜さん」
「え?なんで私の名前、知ってるんですか?」
「コレワイ カンナさん・・・ですよね」
「うそ・・・なんで?」
「だから、魔法使いだって言ったでしょ」
「実は僕、こちらの世界に来たばかりで右も左も分からず、どうしたものかと
迷っていたところ運良くこの店に入るあなたを見かけたんです・・・」
「あなたを一目見て僕が求めてる人だって直感したんです・・・」
「あなたは僕のために存在する人だって・・・僕の直感は100%当たるんですよ」
「あなたは、なんと言っても可愛いし見るからに優しさが体から滲みあふれてる」
「これから一緒にお付き合いするわけですから不細工な方より可愛い方のほうが
いいに決まってるでしょ?」
「ゆくゆくは、もしかしたら柑菜さんは僕の将来のハニーになるかもしれませんし」
「ハニーって・・・なに、言ってるんですか、あなた・・・」
「勝手にベラベラと・・・」
「ライトです・・・柑菜さん」
「親しみを込めてダーリン・・・っと呼んでくださってもけっこう」
「ダーリンですって?・・・なんでライトさんからダーリンになるんですか?」
「はっきり言って迷惑なんですけど・・・ライトさん」
「それに、もうすぐ友達も来ますし・・・だから、どこかへ行っていただけま
せん?」
「それは、僕としては不本意な選択としか言わざるを得ません」
「あの・・・あなた・・・ライトさん苗字とかないんですか?」
「苗字はストーン・・・フルネームはラブラド・ライト・ストーン」
「でもフルネームは面倒くさいでしょ」
「だからライト・・・もしくはダーリンって呼んでくだされば・・・」
「まあ別に僕が柑菜さんちに養子に入れば「是和伊 ライト」になるわけですら」
「苗字なんて忘れてもいいんです・・・」
「養子って・・・なに言ってるの・・・」
「そんなことより話の続きですけど・・・」
「柑菜さんとのこの素晴らしい奇跡的出会いを放棄するなんてことは愚の骨頂
でしょ」
「僕は運命の人を見つけたんですよ、柑菜さん」
「いきなり彼氏がイヤって言うなら、彼からでもいいですから・・・」
「ね・・・柑菜さん」
そう言うとライトは、ずいっと上半身ごとテーブルから前に乗り出した。
「ちょ、ちょっと〜、こっちに顔近づけないでください」
「氏があるかないかだけで彼氏も彼も意味は同じです、なに言ってるんですか」
「ほんとに変な人、さっきも言いいましたけど迷惑です・・・」
「だいたい魔法使いなんて、この世にいるわけないでしょ」
「じゃ〜私が魔法使いって証拠、お見せしましょうか?」
そう言うと私は彼に、いきなり手を掴まれてカフェの外に引っ張り出された。
「ちょ・・・ちょっと〜・・・離してください」
「よろしいですか?」
「なにがいいんですか?」
「私を外に引っ張り出して何するつもりですか?」
「あの、もうすぐ伊奈ちゃんが来るんですけど・・・」
「待たせておけばいいんです、お友達は溶けてなくなったりしませんから・・・」
「では柑菜さん、ご自分の家の場所を頭に思い浮かべてください」
「え?・・・なんでですか?」
「いいから、言うとおりにしてください・・・」
「どうです?・・・思い浮かべました?」
「う、うん・・・あ、はい」
「では、飛びますよ」
「え?飛ぶって・・・?」
そう言うと彼は右腕を前に出して、手の平と指を上に向かって立てると左手で
私の腕を掴んだまま何か言った。
「トブーヨアルルドバッショーニ・・・」
その言葉が終わらないうちに気がついたら私は彼と一緒に私の家の前に
立っていた。
つづく。
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