第4話 裕太と桜

友作が帰った。

それから俺は息を吸って吐く。

何か悪い事をしてないだろうか。

失礼というか変な事をしてないだろうか。

そんな事を思いながら、だ。


それから俺はスマホの連絡先に友作が追加されているのを確認してからそのままスマホを閉じ...ようとしたのだが。

友作から連絡があった。

今度は可愛らしい蛇のスタンプを送ってきている。


(今日はありがとうございました)

(いや。すまない。俺からもありがとうな。楽しかった)

(楽しかったですか?...そ、そうなんですね)

(それはそうだろう。男子の家に女子が来れば誰だってウキウキする)

(そうなんですか?私は分かりません)

(いや。まあとにかく。ありがとうな。楽しかった)

(はい)


友作はウッキウキな感じでスタンプと文章を送ってくる。

俺はその姿を思い浮かべながら苦笑いをしてから文章を送る。

すると友作はハッとした様な感じで送ってきた。


(勉強しています?今度テストです)

(思い出したくもない事を。...だけど勉強しているよ)

(そうですね。...うん)

(...友作は凄いよな。勉強熱心で。いつも上位だよな。成績)

(あれはただの数値です)

(でも俺は本気で凄いって思っているよ)

(え?)

(...数値だろうがその数値が出たという事はそれは頑張りの証だろう)


俺の言葉に友作から文章がこなくなる。

そして数秒してから笑みを浮かべた感じのスタンプに恥じらう感じで(ありがとうございます)と文章を送ってきた。

俺はその文章を見ながら笑みを浮かべる。


(...でもそんな事、初めて言われました。所詮は数値だと思っていました。実力で勝らないと意味ないって...)

(...そうか。...だけど俺じゃ取れない数値だ。...お前は天才且つ...凄いよ)

(ありがとうございます...)

(...それで言い忘れていたんだが...今度の土曜日するか?デートもどきは)

(あ。そ、そうですね。...どんな映画を観ます?)

(ラブロマンスの映画があったよな。あれ観るか)


友作は(はい)と言ってくる。

俺はその言葉に柔和になりながらお茶を飲む。

片付けをする。

そうしていると。


(私に付き合わせていませんか?映画...)

(いや。ちょうど興味があったから。その映画はな)

(だったら良いんですが...)

(あまり人に配慮しなくて良いぞ。...友作)


すると友作は(あの)と書いてきた。

それから数秒間また文章が途切れてから書かれてくる。


(桜って呼んで下さい)

(...は!?な、何で)

(恋人なのに上の名前で呼ぶのはおかしいです)

(...し、しかし...女子を名前で呼んだ事は無いんだが...俺の経験上...)

(確かにそうかもしれませんが...)


困惑していると思われる。

俺はその事に落とした箒を見ながら文章を打つ。

それから(桜)と書く。

すると桜は返事をしてきた。


(アハハ。何だか不思議な感じですね)

(...そうだな...)

(じゃあ。...裕太)


背中がメチャクチャむず痒い。

まるで虫が走っているかの様な感じだ。

赤面が止まらない。

どうしたものか、と思いながら俺は返事をした。


(あ、ああ)

(男の人を名前で呼ぶの初めてですね。...それも下の名前でさん付け無しで)

(そ、そうなんだな)

(そうですね。...じゃあ学校でも同じ名前で呼んで下さい)

(なん...だと...)


俺の霊圧が恥ずかしさで消えそうになった。

それは一体どういう事だ。何で学校でも!?

と思っていると桜は俺の感じに見透かした様にこう打ってきた。


(だって学校が一番の問題です。是非、名前で呼んで下さいね)

(...しかし...)

(裕太。めっ、ですよ)

(...分かった...呼びます)

(はい。...じゃあそれで宜しくお願いします)


それから桜はそのまま(では。バスに乗ります)と会話を切った。

俺はその事に口元に手を添える。

そして撫でる。

そうしてから赤くなって火照っている身体を触る。


「...グゥ...」


俺は額に手を添える。

それから俺は天井を見上げた。

偽恋人にしても...キツいものだな。

この呼び方は。



翌日になった。

俺は起き上がってから朝食を食べた。

そして準備をしてから玄関を開けて尻餅をついた。

何故かといえば。


「何をしているんですか?」

「お、お前こそ何をしているんだ。友作」

「桜です」

「あ、ああ。すまん。桜...」

「見て分かりませんか?お迎えに来ました」

「...ば、馬鹿な。...お前な。い、幾ら恋人って言っても」

「駄目です。抜かりがあったら全て崩れますので」


そして俺の腕を持って立ち上がらせる桜。

それから俺の尻とかを叩いてから埃を払い落とす。

俺に向いてきた。


「駄目ですよ。そんな感じでは周りは騙せません」

「...あ、ああ。すまない」

「全く。どうしようもないですね」


桜は苦笑しながら俺の腕から手を離す。

それから外を指差す。

そして笑みを浮かべる。


「じゃあ行きましょうか」

「あ、ああ」


俺はそのまま歩き始める。

そしてその横を桜が歩いて来る。

そんな構図に通行人が唖然としていた。

当然...クラスメイトもそうだが。


「は?」

「お?え?」

「...へ?」


「待て...どうなっている...」とでも言いたそうな顔だ。

それは俺もなのだが。

そう思いながら横の桜を見る。

桜は「シャキッとして下さい」としか言わない。

だが正直無理がある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺達、偽恋人の筈だったのですが互いに何かおかしいのですが アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画