第3話 連絡先交換

友作が俺の家に来た。

それもわざわざ生徒手帳を届けに、だ。

俺はそんな友作を家に上げる。

それから今に至っているが。


友作は俺と本気で恋人の演技をするらしい。

そこら辺の頑張りが凄いと思う。

正直俺は適当でも良いと思っていたのだが。

そう思いながら俺は友作の姿を見る。


「そうだな。じゃあ映画を観てから別れるか」

「何を言っているんですか?」

「え?」

「私達は仮にも恋人同士です。映画観ただけでお互いに完結する気ですか?」

「じゃあどうすれば良い?」

「恋人っぽい何かをしましょう」

「何かをしましょうって何をすれば良いか分からないんだが」

「...う...」


勉強熱心なのは大変良いが。

それが実行出来なければただの骨折り損のくたびれもうけだ。

俺は考えながら友作を見る。

友作は「...」となっていて真剣に考えている。

そんな友作に対して俺も考える。

恋人っぽい何か...。


「...じゃあ...遊園地に行ってみないか」

「それは映画を観た後ですか?」

「そうだな。...映画を観た後にその近所にある遊園地に行ってみないか」

「良いですね」

「ああ。...因みに好きな乗り物とかあるのか」

「...私は遊園地とか行った事が無いです」


少しだけ暗くなる顔。

いけない...墓穴を掘った気がする。

俺は慌てながら友作を見る。


「...友作。その...すまない」

「え?...何がですか?」

「下手な提案だったな」

「!...い、いえ。すいません。私も暗くしてしまって」


友作は慌てる。

俺はその姿を見つつ真剣な顔をする。


「...嫌な事があったら嫌って言ってくれ。俺は...あくまで恋人なんて作った事が無いから」

「そうなんですね...」

「...ああ」


友作は驚きながら俺を見る。

俺はその顔に苦笑しながらお茶を見る。

お茶の中に自分の顔が映る。


「...なあ。...友作は友人は作らないのか」

「友人は...良いです。...私、そういう関係の人じゃ無いので...」

「...そうなんだな」

「そうですね」

「...じゃあ俺と友人にならないか」

「...え?」


かなり驚きながら友作は顔を上げる。

それから驚きの眼差しを見せる。

俺はその様子にスマホを差し出した。


「...先ず連絡先の交換とかな」

「え...でも...」

「恋人なのに連絡先すら知らないとかおかしいんじゃないかって思うんだ。...まあ嫌なら良いんだけど...」

「い、いえ。...全然大丈夫です。...じゃあお願いします」


それから友作は慣れない手つきでスマホを出す。

そしてスマホのメッセージアプリを出した。

そうしてから連絡先を交換する。

俺は念の為にその連絡先にメッセージを飛ばす。


(大丈夫か)


すると友作は慣れない様に慌てながらも。

返事を書いて送ってくれた。

そしてウサギのスタンプも一緒に。


(はい。元気です)


そういう感じで、だ。

俺はそのメッセージに苦笑しながら友作を見る。

友作は何だか嬉しそうな感じでスマホのメッセージを見ていた。

その姿を見てから俺はスマホに目を落とす。


「...そういや」


女子とメッセージしたのは...初めてだな。

そう思いながら俺は新しい連絡先。

友作桜、というのを見た。

するとスマホにメッセージがまたきた。


(何だか初めてで不思議で送ってしまいました)

(この至近距離で。...嬉しいっていうのは?)

(初めてなんです。...家族以外のメッセージは)

(ああ。そうなんだな...)


何だか汗が出てきた。

そういうのは初めてとは思わなかったから。

思いながらスマホを見る。

すると友作が顔を上げてから俺を柔和に見ている事に気がついた。


「...お、おう。どうした」

「これからずっと宜しくお願いします」

「...それだと愛の告白みたいなんだが...」

「...え!?」


俺の言葉に友作が目をパチクリしてから赤くなる。

そんな姿を見れるとは思わなかった。

俺はクスクスと笑いながら友作を見る。

友作はスマホを置いて咳払いをする。


「すいません。ちょ、ちょっとテンションが上がっちゃいました」

「...そ、そうなんだな」

「あくまでこうしてやり取りをしたのは初めてなので...家族以外は。...本当に」

「...そうだったんだな」

「はい」


友作は言いながらスマホをチラッと見る。

まあ友作も...あくまで女子だ。

だからそういうのは...興味があるんじゃないかって思ったけど。

こう表現が露骨とはな。


「...友作」

「はい」

「...これから宜しくな」


俺はそう言いながら友作を見る。

友作は頷いてから笑みを浮かべた。

それからスマホを胸に添えてからこう言った。


「ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします」


と、だ。

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