第2話 希薄な関係性
何というか...ありえない状態になっている。
まさかこんなモブキャラの俺が...友作桜と付き合うなんて思ってない。
というかまあ偽恋人だけど。
だけど...あの美少女と付き合えるんだぞ...ありえない。
「うーむ」
そう考えながら俺は授業の復習をしてからそのままスマホのヨートベのゲーム攻略のプレイ動画を観ていた。
ゲーム攻略動画っていうのはゲームの実況の動画だ。
俺はゲーム実況も好きなのである。
なので観ていた。
「という事で実はここで主人公とヒロインが熱愛します!」
ヨートベの実況者がゲームの恋愛の部分を解説し始めた。
何というか真っ赤に赤面した。
身体が急激に熱くなる。
友作の事を...思い浮かべてしまった。
「ぐ...」
俺はよからぬ妄想にかられてしまい。
そのままスマホを閉じてから額に腕を添える。
それから天井を見上げる。
これはいけない。
友作とはこんな関係じゃない。
偽恋人だ。
「...」
盛大に溜息を吐く。
それからスマホをベッドに投げ出してからそのままクルクルと椅子を回転させる。
そうしたら気分がなんとなく落ち着いた。
俺はホッとしながらスマホを拾い上げてからそのまま勉強机に向く。
「よし。勉強すっか」
そして俺は勉強をする。
すると丁度インターフォンが鳴った。
俺は「?」を浮かべてから玄関に歩いて行きドアを開ける。
顎が落ちた。
「と、友作!!!!?」
「山角くん。おっちょこちょいね。生徒手帳落ちてたから」
「あ、ああ。そういう事か」
「...あの」
「...はい?!」
「...その。今日、凄く格好良かったです」
友作はそう言いながら柔和な笑みを浮かべる。
俺はその姿に真っ赤に赤面してからハッとしてから家の中を見る。
それから友作に咳払いをする。
「あ、上がって行くか?」
「...え?...あ、良いんですか?」
「...ああ。退屈だったしな」
嘘ばっかり言うね俺も。
そう思いながらも友作がせっかく来たのにこのまま追い返す訳にはいくまい。
考えながら俺は友作を家に招く。
それからお茶を出してお茶菓子を出した。
「ありがとう」
友作の意外な素顔だ。
こんな感じの柔和な顔が出来るなんて。
そう思いながら俺は笑みを浮かべてから対面に腰掛ける。
すると友作はお茶を一口飲んでから「その」と呟く。
「...恋人って何をするんですかね?」
「え?...い、いや。それは俺に聞かれても分からない...」
「...そうですよね...」
「そうだな...」
「...」
「...」
俺達は悩みながら考えてみる。
だが答えは全く出ない。
すると友作はプッと吹き出した。
それから柔和な顔をした。
「必死に考えてくれてありがとう」
「...いや...必死に考えるよ。そりゃ。だって恋人関係。偽でもな」
「...え?」
「え?」
友作はキョトンとしながら目を丸くする。
それから目をパチクリした。
俺は「?」を浮かべる。
「そ、そうなんですね」
「...あ、ああ」
「...アハハ」
「...」
まさかこれドン引きされた?
と思っていると友作は苦笑しながら悲しげな目をする。
それからこう言う。
「...そんな事。今まで言われた事がない」
そういう感じで、だ。
俺はその顔に目線だけ動かして見る。
そして友作は「...」となってから考え込み。
顔を上げた。
「恋人映画はどうでしょうか?恋人っぽい感じで...あの人達にお知らせできます」
「あの人達?」
「あ、私の親の様なものです」
「それは...成程な。聞かない方が良いか」
「え?良いですよ?実親ですけど関係性がかなり希薄な感じの人達ですし。あんなのは親と言いません」
友作はそう言いながら薄ら笑いを浮かべる。
俺はその姿に何か重なるものを感じる。
だけど彼女の方がもっと大変そうに見えた。
その事に俺は返事をした。
「そうか」
とだけ、だ。
すると友作は「?」を浮かべて小首を傾げる。
俺はその顔に同じ様に疑問符を頭に浮かべてから聞いた。
「どうした?」
「...いえ。私の事...気にならないんですか?」
「家の事を聞いてほしくないんだったら聞かないよ。...俺は無理にはね」
「...」
友作は不思議そうな顔をしていたが。
俺の必死な様子を見つつクスッと笑う。
それから頷いてから微笑む。
「...ありがとうございます。優しいんですね」
「...優しい訳じゃないよ。...ただ君は...似ているんだ」
「...似ている?」
「...まあ。うん。...それでな」
「そうですか」
俺の過去は思い出したくはないな。
そう思いながら俺は首を振る。
それから茶柱のあるお茶を飲み。
そして2人で落ち着いた。
正直これだけでも恋人効果抜群だろ、とは思ったが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます