第2話 曽祖父 秋葉原上杉子爵家の繁栄

曽祖父がこの世界に転生したのは、昭和元年(1926年)。彼は上杉伯爵家の末子として生まれ、華族という地位を得た。転生特典として授かったのは、電子ハードウェアの高度な知識と大慶油田の正確な位置情報だった。そして、それに加えて、彼は前世で一流のSE(システムエンジニア)だった経験をフル活用し、昭和という時代に革新をもたらした。


彼が築いた偉業の第一歩は、第二次世界大戦後のイギリスで始まった。当時のドイツではクーデターによって戦争が中途半端に終結しており、彼は混乱の時代をチャンスと捉え、イギリスの大学に留学した。


そこで、上流階級の放蕩児たちに目をつけ、「JAPAN Dream」という壮大なビジョンを語りかけた。


「日本という国の未来を見てみないか?」


彼は彼らを巻き込み、資金を集めて満州の大慶油田の発掘プロジェクトを開始。このプロジェクトは瞬く間に見事に成功し、彼は大規模な特殊会社を設立。権益を日本政府に高額で売却することで莫大な資金を得た。


さらに、彼は放蕩児たちにも資金や権益を分配し、彼らの心を掴むことで国際的な人脈と信頼を築いた。この成功が、彼の次なる挑戦の礎となった。


油田発掘で得た膨大な資金を基に、曽祖父は電子部品メーカーを設立した。

1.真空管の販売を基盤に安定した収益を確保

2.同時にトランジスタの研究開発に着手


さらに彼は、イギリス滞在中に天才数学者アラン・チューリングと協力し、世界初のトランジスタを用いた汎用コンピュータを開発。この技術は、世界の電子産業に革命を起こす第一歩となった。

これにより、彼の名声はイギリス国内でも広がり、次第に世界的な評価を受けるようになった。


イギリスでの成功を引っ提げて帰国した曽祖父は、日本でさらに飛躍を遂げた。曽祖父は欧州上流会階級と実家の上杉伯爵家のコネを使い

1.トランジスタの大量生産を開始

2.ICの開発

3.汎用コンピュータの開発と販売

4.ソフトウェア会社の設立

これにより日本のIT産業の礎を築いた。


彼は、華族という地位と現代的企業経営を活かして中規模財閥を立ち上げ、秋葉原に本社と屋敷を移転。日本への功績で日本政府から叙勲され、秋葉原上杉子爵家として知られるようになった。


曽祖父の功績の中でも特筆すべきは、秋葉原経済特区の設立だ。彼はサブカルチャーへの深い造詣を活かし、秋葉原を日本の電子産業とサブカル文化の中心地として発展させた。上杉子爵家の資産を惜しげもなく投入し、秋葉原地区を秋葉原経済特区として全面的に開発した、そして以後も秋葉原の開発を子爵家資産で使う事を条件に秋葉原経済特区の税収の10%を上杉家に還元する仕組みを構築した。

これにより秋葉原ラジオ館、秋葉原電気センター、大規模書店や家電量販店等の商業スペース。ライブハウス、シネコン、コンサートホール、図書館等の文化スペースを建設し、上杉グループの各社が本社を移転してきた。だが俺の曽祖父がもっともやりたかったのは各家のメイド服や作法で喫茶をサービスする〇〇家メイド館やアニメショップだったのではないかと想像している。案外お茶目なところもあったようだ。俺も秋葉原開発は楽しみだ。


この取り組みによって、秋葉原は世界的に知られる電子機器とサブカルチャーの聖地となった。そして、この街を形作った中心的存在が、俺の曽祖父だった。

そしてその象徴は秋葉原上杉家だ。秋葉原を舞台とする映画、アニメは大概うちの屋敷を描写する。そして聖地巡礼として多くの人々が屋敷前で撮影している。その中を帰宅したり、出かけたりするのは中々勇気がいるのだ。


曽祖父はさらに財閥を現代的に改革し、グループ経営を推進した。

1.財閥外から多様な企業を取り込み、事業の幅を拡大

2.グループに取り込んだ会社は元経営者に任せてグループ内で支援し、業績アップ

3.平成初期にスマートフォンを開発

4.スマートフォン市場で世界シェアの50%を確保

5.半導体市場で世界シェア30%を誇る世界的な企業グループへ成長


財閥そのものは中規模ながら、グループ全体では世界でも類を見ない規模に達し、今や電子産業とITの分野で圧倒的な影響力を持つ存在となった。


曽祖父が残したBlu-rayの中で特に心に残ったのは、彼が俺の未来を見据えてくれていたことだ。


「義之、お前がAI技術者として生きることは知っている。だからこそ、基幹となるハードウェアやソフトウェアの基盤を整えておいた。ただし、AIの分野そのものにはほとんど手をつけていない。お前が切り拓くべきブルーオーシャンを残しておいたのだ。」


その言葉に、俺は曽祖父がどれだけ先を見据えて行動していたかを改めて実感した。彼が築いた技術基盤と経済力があれば、AIの分野でさらに大きな飛躍を遂げることができる。


Blu-rayの最後には、曽祖父からのメッセージが記録されていた。


「私は今、生まれたばかりの君を見ている。お前には上杉家の未来を任せたい。だが、焦る必要はない。この記録を参考に、自分の道を切り拓け。上杉家の歴史はお前が次に書き加えるものだ。」


その言葉を胸に、俺は曽祖父が築いた上杉子爵家の誇りを受け継ぎ、この秋葉原という街とともに未来を切り拓く覚悟を固めた。


「秋葉原をここまでの街にし、さらに未来を見据えてブルーオーシャンを残してくれるなんて……曽祖父様、本当にすごすぎる。」


彼の築いた歴史と遺産を受け継ぎ、俺もまたこの世界で新たな道を切り拓くべき時が来た。AIという未開の分野で、彼が示してくれた可能性を現実に変える。


未来を背負い、曽祖父に負けない歩みを進めるため、俺は新たな一歩を踏み出す決意を固めたのだった。

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