第3話 うぷぷ配送
そんなこんなでとにかく暇がない。
そんなある日、配送途中に霊柩車を見た。
これから火葬か。念仏長いんだろうな。念仏唱える坊さんは、一体いくら儲けてるのか知らん。時給なのか?お布施とは?卒塔婆に立派な字を書くだけでお金発生するシステム。いいね。一字いくら?坊さんなるにはどうすりゃいいのかねぇ等々、勝手気儘な妄想が頭を支配。終には、もしも念仏らしい発音で日本語が出来ていたらどうなっていただろうか?という疑問が頭を駆け巡った。
例えば霊柩車。れいきゅうしゃ。である。これを念仏っぽく唱えると、れぇエエェェイィイイィきゅううううしゃあああぁあぁあ
となる。
オモロ。
1人クスクスと笑いながら運転していくと、道路に書かれた止まれの文字。もしも念仏のような発音であれば、とぅぅおおおまあぁあんああぁあれぇえええんえぇえ。となる。
これは発見!何とも坊主仏教念仏を馬鹿にしているが、1人楽しむことぐらい良かろう。うぷぷと口を抑えてみるものの、にやける頬の上がるのを抑えられず、奇妙な顔で対向車が見てくるのを見てようやく抑えることが出来た。
会社でこんなこと言ってたら、さっさと仕事しろだの、何がオモロイねんアホかと思われるに違いない。査定にも響く。下手したら精神障害の類いを疑われ、只でさえ評価が下がっている俺の評価は更に下がり、下がりきってしまい評価はゼロ。ボーナスゼロ。最悪切腹のうち首を切られこの世から抹殺されてしまうやもしれん。それはさすがに..まぁ別に良いのだが、切腹はちょっと痛いしなぁやだなぁと思い、これは俺のプライベートな笑いにしよう。と心に決めた。うぷぷ。
配送先の客先に着いた。
つぅう~ぅう~い~たああ~~。うぷぷ。
頬を戻し営業の顔に戻すのが大変で、時に隠れて後ろを向いてうぷぷとしながら検品を終え戸を閉める。うぷぷ。
こうなると止まらない。そのうち、目につくもの全てを念仏のように言ってみたくなった。
陽光。雲。空。車。窓。フロントガラス。ミラー。芳香剤。ソケット。ドアノブ。燃料計。速度計。シートベルト。ハンドル。通風口。ドリンクホルダー。お茶。水筒。弁当。お菓子。バック。名刺。ガム。煙草。ライター。見積書。付箋。携帯電話。スーパー。病院。おっさん。おばさん。爺さん。婆さん。子供。女子高生。カップル。鳥。蝿や蚊等の虫。草花。案内標識。看板。
そのうち単語ではなく言葉まで言ってみたくなった。
右折します。左折します。前進します。バックします。おはようございます。こんにちは。いらっしゃいませ。ようこそおいでくださいました。注文承りました。ありがとうございます。お待たせ致しました。失礼致します。失礼致しました。大変申し訳ございません。早急に手配させて頂きます。等々。うぷぷ、うぷぷと運転中に1人笑いながら配送。結果、どうにもうぷぷが止まらず、客先からは、今日は調子良さそうだね!何てお言葉を頂いたりして、調子良く仕事が出来た。
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