第4話 ある日、突然、美少女に 4
「聞いていないだと? ああ、たしかに言っていない。 だが私は美少女に
そう言われてロウはダンジョンでケイブウルフに襲われて意識が朦朧としていた時の事を思い出す。
──
目の前のいかにも胡散臭い、大きな丸眼鏡を掛けてカカオシガレットをまるで本物のタバコのように咥えている女……真津戸アヤカは確かにそう言っていた。
「ちょっとした副作用?」
「that's right! 良く覚えているじゃないか。 まぁあの時は時間がなかったからそんな説明にしたが、本来なら
「いや、全然些細なものじゃないし、深刻すぎる副作用でしょ!?」
健全な男子高校生ならば、甘やかな恋とは云わずもっと直接的で肉体的な関係を女性と結びたいと願うのは当たり前の事で、八咫綱ロウもやはり、かわいい女の子と恋人になってそういった行為をしたいと願っていた訳で、決して自分が美少女になりたい訳じゃなかった。 ましてや股間に付いていたナニが無くなってしまってはナニも出来やしない。
「とはいうが、じゃあ君はあの状況で断れたのかい? 君はあの薬を飲んで美少女にならなければ死んでいたんだよ。 もしも美少女になるぐらいなら死んだ方がマシだと言うのなら、仕方が無い……ここに苦しまずに死ねる薬がある。 これを君にあげよう」
アヤカは無造作に突っ込んだ白衣のポケットから小さな瓶に入った薬を取り出して見せる。
「うっ……いやぁ、美少女になるくらいなら死んだ方がマシとまでは言わないんですけどぉ……」
ロウが上げた抗議の声に対して予想外のアヤカの対応に若干目が泳いでしまう。
「まぁしかし、君がどうしても男に戻りたいというならば私の頼みを聞いてくれるなら、男に戻れる薬をあげよう」
「戻れる薬あるんですか!? だったら早く下さいよ!?」
「あの薬の原料はとても貴重でね、私も3錠しか作れなかったのだよ。 そしてそのうちの2錠は既に使用済みだ」
「って事はあと1錠……」
「そう。 だからとても貴重なのだよ。 だから私もタダであげるわけにはいかない。 そもそも命を助けたり、そのために貴重な薬を使ったりで私的には億単位の損失だからね」
「うっ……それは、たしかに……頼みって一体なんなんですか?」
自分の意思ではなく性転換してしまっていたので被害者のような思考であったが、そもそもアヤカがいなければ死んでしまっていたのも、また事実。 どんな傷や病も治してしまう身体を作り変える薬など誰もが欲しがる夢のような薬であるし、ロウには余計であったが性別を変えるという効果も人によっては喉から手が出るほど欲しい効果かもしれない。 そんな貴重な薬に値段を付けるならば、もしかしたら億では済まない可能性もありそうだ。 何も反論出来なくなったロウはとりあえず頼みを聞いてみることにする。 しかし、真津戸アヤカの提示する頼みがあまりにも無理な頼みだった場合、男に戻る可能性は潰えてしまう事になる。
「フフッ、なぁにそれほど難しい事じゃあない。 私の友人が行方不明になってしまってね。 その現場に潜入して色々と調べて欲しいんだよ。 出来れば本人を見つけてくれると1番いい」
「行方不明!? ……げ、現場って?」
行方不明などと言う普通に生きてればまず関わる事の無い不穏なワードに嫌な予感が頭を
「フェアリーテイル女学院だ」
「女子高じゃんか!? そもそもこんな薬作れるんならオレじゃなくても誰か美少女になりたい人捕まえて飲ませればよかったじゃないですかー?」
「まぁ、落ち着きたまえ。 私も最初はフェアリーテイルに通う生徒に頼んで調べて貰おうと考えたんだけどね、信用ならない人間に頼んで適当に調査されても敵わないしね。 それと男に戻りたい君だからこの取り引きは成立するんだよ。 そんな君だから頼むんだよ。 それに美少女になりたい奴を美少女にしたところで感謝こそされても、誰も
「最後、不穏なワードが聞こえたんですけど? 命をかけるって? そんな危険なんですか?」
「あぁ…… いや言葉の
アヤカはそこで言葉を区切ると自分の肩を抱くようにして大袈裟に震えて見せると、想像するだけで恐ろしいね、と意味深な笑みを浮かべる。
「いーや! そんな危ないとこ行きたくないですって! バレたらどうなっちゃうの!?」
「フフフ、だがよーく想像してみたまえ。 今の君はどっからどうみても美少女だ。 誰にも疑われないだろう。 そして学園島の全ての学園がそうであるようにフェアリーテイル女学院も全寮制だ。 美少女達に囲まれて授業を受けたりする訳だ、夏になればプールの授業もあるだろう。 君は女の子として何に憚ることもなくクラスメイトの女子に混ざり更衣室で着替える。 更には、フェアリーテイル女学院の寮には豪華な大浴場がある。 君は1日の疲れをその大きな湯船で取るわけだが……ふと目を周りに向けてみると……周りにはたくさんの女子が一糸纏わぬ姿でキャッキャッウフフと身体を洗いあっているかもしれない。 フフフ、どうだい? 行きたくなってきたかな?」
「い、行きます! やります! オレにやらせて下さい!」
上手く想像出来たのか顔を真っ赤にして鼻血を垂れ流しながらロウはやる気に満ち溢れているようだ。
「よろしい。 では君の新たな戸籍や入学の為に必要な事は私がやっておこう。 それとフェアリーテイルの制服を頼むのにやはりスリーサイズは測らないとな! さぁ服を脱ぐんだ! さぁ!」
「ぎゃーー!! いーーやーー!!」
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