第4話

「それじゃあな、犬飼(いぬかい)頼んだぞ」

組事務所で包茎が元ヤクザで今は

堅気になり真面目にタイ焼き屋を営んでいる

真の恋人、犬飼猛(たける)に命令した。

「でもな、おやっさん」

犬飼がためらいをみせると、

「犬飼、オレの命令に逆らったら

どうなるかわかってるんだろうな?」

と、包茎が犬飼を脅した。

「でも、真をデリヘルに売り飛ばすなんて

オレにはとても」

犬飼がなおもためらいをみせた。

「なーに、犬飼、ものごとやっちまえば

意外にどうってことねえもんさ」

包茎が犬飼の肩を抱きながら、そう諭した。

「でっ、でも」

「なあ、犬飼、この間東京湾でコンクリ詰めにされた

身元不明の死体が上がっただろ。あれだれが

やったと思う?」

「まっ、まさかおやっさん」

「なあ、犬飼。やってくれるな。あの真って

女はオレがいままで見てきた中でも

五本の指に入る上玉だ。。間違いなく

高く売れるぜ」

包茎がドスを効かせた声を出した。

「わっ、わかりました。やってみます」

犬飼が力なく答えた。

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