20.メアリーとロベルト
オウサーシティ、とあるライブラリ 深夜〜
「どうボブ?記憶は整理されたかしら」
「ロベルトで結構ですよ。メアリー。もう僕はロベルト以外の何者でもなくなってしまったのでね」
「そう・・・、でも嫌な記憶を思い出させてしまったわね。私があそこに行かなければ貴方はこんな目には合わなかった。あの時あなたに償いをすると約束したわ。覚えているかしら?」
ボブは頷いて答えた。「ええ、あれはあなたの死に際でした。僕は、僕こそがあなたに謝りたかったのですが声を上げる事ができなかった。でも、243年後の今生きていてそれを言うことができる」
「でもあなたへの償いは、あれを実行することでしか叶えられない」
ボブ/ロベルトは黙ってそれを聞いていたが、話しを変えようとして話し出した。
「それはそうと、先日の防衛省のクローラーの件ですが、実態が掴めてきました」
「どういう事だったの」
「先月くらいから、創造物の暴走が数件あったのを知っていますか」
「ええ、鳥が通りかかった人の頭を突いたのと、メイドの創造物が家人を殺してしまった・・・・あの件ね」
「そうです。防衛省のクローラーはオリジンが自然発火して焼けてしまったらしいという事でした」
ボブ/ロベルトは続けて言う。それは何らかの悪意の伝達によって、意図的にピンポイントに起こされていた可能性があると。
「それを教えてくれたのはリードです・・・・」
「あなた・・・・リードに連絡を取ったというの?」
「はい、イリーガルな方法で」
「ロベルト、それはあまり感心しないわね。彼が、彼の仕事が誰かの目に触れてしまったら、この計画は簡単に瓦解してしまうわ。こうやって会うことも出来なくなる」
ボブ/ロベルトはそれについて、メアリーに対して謝罪した。しかし、もうひとつ持っていた秘密のことは言えなかった。ヤマガタにこの大筋を語ってしまった事である。
「まあ、いいわ。その伝達というのは何処から発せられたものなのかしら」
「ええ、それがですね。あれが出たのはわたし達がよく知っているあの島国からなんです」
「あなた冗談もプログラムされたの?」
「もともと私は冗談を好みませんよ、メアリー」
「マザーのある島、そして私の故郷のある島、私たちが石にされた忌みべきあの島。誰がそんな事を」
「分かりません。マザー本体かもしれませんし、それの近くにいる誰かかも知れません。あの元島国は大きな四つの島から成り立っています。その一番大きな島が、マザーが隠されている場所、そしてあなたの故郷、私達が出会った島ですね」
メアリーは考えた。最終的にはその島へ再び渡る決意はあった。しかし、その前に一度行く必要があるのか、それとも無いのかを。
「その出来事が私たちの計画を邪魔するもので無いことを祈るわ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます