第5話「先輩の知恵」
「美咲ちゃん、その化粧落としでいいの?」
カフェのバイト終わり、ロッカールームで化粧を落としていた私に、レイカ先輩が声をかけてきた。
「え? あ、はい…安いんですけど、まあ…」
言いながら、手に持った商品を見つめる。確かに安さで選んだだけで、特に考えもせずに使っていた。
「肌荒れしてない?」
「実は、最近ちょっと…」
レイカ先輩は、私の顔をのぞき込むように近づいてきた。整った顔立ちと透明感のある肌。バイト中もお客さまから「キレイですね」と言われることの多い、憧れの存在だ。
「ちょっといい?」
先輩がスマートフォンを取り出す。私も思わず「目利き」アプリを起動した。
```
商品名:速攻メイクオフ
価格:580円
効果:メイク除去+8、肌負担-10
特性:低価格、即効性
相性:時短重視
隠れた特性:
- 肌バリア機能:低下
- 長期使用リスク:高
- 経済効率:低(頻繁な肌トラブル対策費用)
```
「やっぱり…」と、小さくつぶやく私。
「これ、私が使ってるやつなんだけど」
レイカ先輩が差し出したのは、ドラッグストアでよく見かける商品だった。
```
商品名:やさしく落とすクレンジングオイル
価格:1,200円
効果:メイク除去+15、肌保護+12
特性:低刺激、保湿効果
相性:敏感肌
隠れた特性:
- 肌バリア機能:維持
- コスパ:高(少量で効果的)
- 継続使用適性:優
```
「最初は高く感じるかもしれないけど、これ1本で2ヶ月は持つの。それに、肌トラブルの対策にお金使わなくて済むしね」
先輩の言葉に、私は目を見開いた。確かに、今使っているものは1ヶ月ともたない。それに、荒れた肌のケアに余計なものを買うことも多かった。
「実は私も、前は安いものばかり使ってたの。でもね、結局それって『安物買いの銭失い』っていうか…」
レイカ先輩は、自分の経験を優しく語ってくれた。高いものが必ずしもいいわけじゃない。でも、価格だけで判断するのも違う。大切なのは、その商品の「本当の価値」を見極めること。
「あ、そうだ。これ、サンプルあるから使ってみる?」
差し出されたサンプルを受け取りながら、私は決意を固めていた。今度の買い物では、「目利き」アプリと先輩の助言を参考に、本当に自分の肌に合うものを選ぼう。
その夜、鏡の前で丁寧にメイクを落としながら、私は考えていた。見た目の価格と、実際にかかるコストは違う。そして何より、自分の肌を大切にすることは、けっして無駄遣いじゃない。
スマートフォンには、新しい気づきが記録されていった。
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