第3話「不思議なアプリ」
その夜は、なかなか眠れなかった。
スマートフォンの画面に映る数字を見つめながら、ため息をつく。支出を計算してみると、想像以上に散財していた。バイト代は確かに増えたけれど、それ以上に支出が膨らんでいる。
「こんなはずじゃ…」
布団の中で、SNSのタイムラインを無意識にスクロールする。新作コスメの投稿、セールの告知、限定アイテムの予約開始…。いつもなら心躍るはずの情報が、今は重たく感じる。
深夜0時を回ったころ、突然画面が青白く光った。
「え?」
見慣れないアプリのアイコンが表示されている。シンプルな虫眼鏡のマーク。インストールした覚えはないのに。
恐る恐るタップすると、画面いっぱいにメッセージが広がった。
「あなたの「目利き」の旅をお手伝いします」
「目利き…?」
不思議に思いながらも、画面をスクロールする。すると、先日購入した限定ファンデーションの情報が浮かび上がってきた。
```
商品名:限定マーブルファンデーション
価格:6,800円
効果:SNS映え+15、カバー力-5
特性:限定品、トレンド
相性:写真撮影時
隠れた特性:
- 実使用満足度-10
- 衝動買い誘発度+20
- 経済的負担度:高
```
「これって…」
通常の商品情報の下に、見たことのない項目が追加されている。確かに、写真映えは良かったけれど、実際の使用感はイマイチ。そして、この商品をきっかけに他の商品も次々と買ってしまった。
試しに他の商品も確認してみる。次々と表示される「隠れた特性」の数々。それらは、まるで私の失敗を分析するかのように、商品の本質を示していた。
「もし、これを早く知っていれば…」
そう考えていると、画面が再び変化。今度は近所のドラッグストアで売っている基礎化粧品の情報が表示された。
```
商品名:素肌うるおい化粧水
価格:1,200円
効果:保湿力+12、肌バリア+8
特性:ベーシック、ロングセラー
相性:普段使い
隠れた特性:
- 実使用満足度+15
- コストパフォーマンス:高
- 継続使用適性:優
```
「こんなの、あったんだ…」
値段は手頃なのに、実際の効果は高級品に負けていない。しかも長く使い続けられる。今まで気づかなかった「本当の価値」が、はっきりと見えてくる。
スマートフォンを枕元に置き、天井を見上げた。この不思議なアプリとの出会いが、これからの私の買い物、いや、人生を変えていくなんて、その時はまだ想像もできなかった。
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