【伊藤博文】友好の証、あげます!
伊藤博文は、西郷隆盛から受け取った電報を手に取ると、驚愕の表情を浮かべた。内容は、予想だにしない提案が込められていたからだ。まずカナダの裏切りを鎮圧した報告は良いとして、その後の提案は完全に予想外だった。西郷が軍人として提案した内容は、メキシコとの友好関係を深めるための、まるで映画の一場面のような計画だった。
「大陸横断鉄道付近に飛行線を飛ばしてはいかがか」
その文言を読みながら、伊藤は一瞬、思考が停止した。飛行船にメキシコとの友好のシンボルとして、大日本帝国とメキシコのトップが手を握る写真を掲げるという案は、なかなかにユニークで面白い試みだとは思った。
ここで気づいたのは、伊藤がカナダの裏切り事件をきっかけに、メキシコとの関係を深めることが重要だと感じていたことだった。それに、今後の外交でメキシコがどのような態度を取るか不安もあった。西郷が提案した飛行船を使った友好のメッセージには、見た目以上の意味が込められているのだろう。危機感から、この試みは実行に移す価値があると考えた。
「うまくいくかは分からないが、やってみる価値はあるだろう」
伊藤博文は決断を下すと、すぐに西郷隆盛にゴーサインを出した。そして、数週間後。飛行船は無事に完成し、大陸横断鉄道付近を飛ぶための準備が整った。そこには華やかな装飾とともに、大日本帝国とメキシコの首脳が手を取り合う写真が飾られ、現地の空に向かって飛行船がゆっくりと浮かび上がっていった。
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現地ではきっと華やかな式典が行われ、花吹雪が舞っているに違いない。伊藤はその光景を目にすることができないことを惜しみつつも、これが新たな外交の象徴となることを心から願っていた。実際、首相代理に執務を任せて視察に行きたかったが、西郷から「首相が来るような式典ではない」と聞いていたため、それは叶わぬ夢となった。
そして、その数日後のことだった。突然、伊藤博文のもとに慌てた様子の側近が駆け込んできた。
「しゅ、首相! とんでもないことになりました!」
その声には、尋常ならぬ焦りと恐怖が込められていた。伊藤の胸に、嫌な予感が広がる。まさか、飛行船が墜落したのだろうか? それならば、せっかくの友好関係が一瞬にして崩れ去るではないか。
「戦争です! メキシコと戦争になりました!」
その言葉に、伊藤博文は唖然とした。戦争? 飛行船を飛ばしただけで? 一体どうしてそんなことが起きたのだ?
「なんでそうなった!」
伊藤は、我知らず声を荒げてしまった。怒りと驚きが交錯し、冷静に状況を把握することができなかった。
「それが……申し上げにくいのですが、陸軍が飛行船からダイナマイトでメキシコ領アメリカを爆撃したのです」
その報告を受けて、伊藤は目を見開き、呆然とした。
「爆撃! そんな指示は出した覚えがないぞ!」
飛行船が飛ぶことで友好を深めるはずだったのに、何故そのタイミングで爆撃が行われたのか。伊藤の頭は全く整理がつかず、ただ怒りが湧き上がるばかりだった。
「電報によると、西郷将軍の指示だそうです」
その言葉を聞いた瞬間、伊藤は思わず顔を青ざめさせた。西郷が、またしても勝手に動いたのか! あの男、何を考えているのか……。
「やりやがったな! 飛行船を飛ばす提案は、これが目的だったのか!」
伊藤の脳裏に、先程の西郷の言葉が蘇った。「首相が来るような式典ではない」と言ったあの瞬間の意味が、今、ようやく理解できた。西郷が仕掛けた戦争に、伊藤は完全に乗せられてしまったのだ。
「やってしまったことはしょうがない。西郷に伝えてくれ。『徹底的にやれ』と」
伊藤は冷静を取り戻し、指示を出すしかなかった。だが、その直後、部屋を出ていく側近の足音が遠ざかると同時に、伊藤は深いため息をつき、椅子にどかっと腰を下ろした。疲労が全身を襲い、ここ数日の仕事の重圧が一気にのしかかってきた。体調も良くなく、休養が必要だと感じていたが、それは後回しだと思うしかなかった。
そして、書類を手に取り、次の瞬間、伊藤博文は床に倒れた。
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【改稿版】大日本帝国、アラスカを購入して無双する 雨宮 徹@クロユリの花束を君に💐 @AmemiyaTooru1993
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