【西郷隆盛】活躍の場をください、お願いします!
西郷隆盛は伊藤博文の言葉に胸が高鳴るのを感じた。長年、戦場を駆け巡り、幾多の勝利を手にしてきたが、戦争の興奮が蘇る瞬間はいつだって特別だ。目の前の伊藤博文が語る言葉が、まるで響くように耳に届く。
普段冷静な彼も、今ばかりはその判断に困っているように見える。それでも、西郷隆盛はその困惑が「戦争を進めるための迷い」にすぎないと感じていた。
部屋の空気は、ふわりと静かに緊張が走る。西郷はその沈黙をあえて破らなかった。どんなに急いても、ここで焦ってはいけない。伊藤の決断を引き出すために、自分ができる最良の提案をしなければならない。その上で、最大のチャンスを掴むためには、今の言葉が重要だった。
「戦争ですな。アメリカを攻めるおつもりで?」西郷隆盛の言葉は、確信に満ちたものだった。心の中では、もう戦争の準備をしている。無意識に胸の奥が熱くなる。それにしても、目の前の伊藤博文がまさか迷っているとは意外だった。
伊藤博文はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。「確かにアメリカ経済は混乱しているが、それでもアメリカは大国だ。カナダ側から攻めるのは良いが、果たして勝ち目があるのか?」伊藤の言葉からは、戦争を始めることへの躊躇が見え隠れしている。
西郷はその言葉に少しだけ冷や汗をかいた。だが、すぐに冷静さを取り戻す。戦場での判断力を思い出す。軍人として最も重要なのは、戦いのタイミングを見極めることだ。今、この瞬間がその時だと感じている。
「絶対勝てるという自信はありません」西郷は正直に答えた。しかし、その言葉には、戦争をしなければならないという切実な思いが込められていた。何としてでも、この機会を逃すわけにはいかない。戦いは、もはや避けられない運命だ。
「では、メキシコと手を組んでみてはどうだろう?」西郷は意を決して提案した。
「メキシコには、我々が選挙で軍人派のリーダーを選ばせたという貸しもあります。彼らには、今こそその恩義を返してもらう時です」西郷は自分でも、そのアイデアに自信を持っていた。メキシコがアメリカとの戦争で失った領土を取り戻すということは、彼らにとっても大きな動機になるはずだ。
伊藤博文は、少しの間考え込んだ。そして、重い口を開く。「メキシコか…しかし、手を貸してくれるかどうか分からん。」伊藤の声には、まだ迷いが残っていた。だが、少しでも彼の判断を後押しできる材料を提供しなければならない。西郷は続けて言った。
「メキシコは20年前にアメリカと戦争をして負け、広大な領土を失いました。もし、今の戦争でアメリカに勝てば、あの屈辱を晴らし、復讐を果たすことができるのです」西郷は、力強い言葉でその計画を補強した。メキシコにとっても、復讐の機会は逃せないだろう。そう信じて疑わなかった。
伊藤博文はまた少し黙って考え込む。そして、ついに言葉を発する。「一理ある。しかし、戦争を始めるにあたって、作戦がなければ勝てないぞ」その言葉に、西郷は少しだけ焦りを感じたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「では、こうしましょう」西郷はしっかりとした口調で言った。
「アメリカの西部を一点集中で攻撃するのです。海岸からは海援隊による射撃で圧力をかけ、メキシコと共に南北から攻めれば、アメリカを圧倒できるはずです。全面戦争では勝ち目が薄い。しかし、特定の地域に絞れば、必ず勝機があります」西郷は、この作戦に自信を持っていた。確かに一発逆転は難しいが、この一手で戦局を変えることができる。
伊藤博文はその言葉を静かに受け止め、しばらく無言で考えていた。西郷はその沈黙に耐えながら、じっと彼の反応を待った。やがて、伊藤博文は深いため息をつき、ゆっくりと口を開く。
「ふむ、なるほど。では、それでいこう。メキシコには私から連絡を入れる。西郷、お前はカナダへ行ってくれ。お前の好きな戦争の時間だ」その言葉に、西郷の心は一気に満たされた。
心の中で、ガッツポーズをする。ついに、この手で戦争を起こせるチャンスが巡ってきたのだ。
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