第16話

 そうして、起きて二人でリビングへ出たとき。


 リビングにニコッと笑った久実さんが登場して、寝起きの私と佳奈ちゃんは驚いた。


「おはよう、二人とも。さ、顔を洗って身支度なさい。朝ごはんは下のベーカリーでベーグルサンド買ったから。みんなで食べましょう!」


 そんなお誘いに私と佳奈ちゃんは大急ぎで顔を洗い、軽く化粧をし、着替えるとリビングへと到着。


「二人は何が好きか分からないから、とりあえずコーヒーにしたわ」


 飲み物まで買ってきてくれた久実さんに、感謝して買ってもらったベーグルサンドを頂く。


 私が選んだのは生地がブルーベリー入りで、生ハムとクリームチーズにレタスやオニオンがサンドされたもの。


 佳奈ちゃんが選んだのはチーズ生地に小エビとサーモンにレタスとオニオンが挟まったサンド。


 久実さんはゴマの生地にベーコンとオニオン、トマトにレタスの挟まった変わり種BLTサンドになっていた。


「んー‼ここのベーグルサンド、すごく美味しい」


 まず、さきに食べた佳奈ちゃんが声を上げる。


「私もここの来るたび食べているけれど、美味しいのよね」


 さすが、美味しいものをよく知っている久実さんのチョイス。


 まちがいなく美味しいわけである。


「咲良ちゃんのも、どう?」


 佳奈ちゃんが聞くので、私は答えた。


「ベーグルの生地がまず良いよね。もちっとしているし、ブルーベリーも風味豊かで、クリームチーズと生ハム野菜たちがマッチしているからすごく美味しい」


 感想を述べると、佳奈ちゃんは久実さんと顔を合わせて言った。


「さすが、料理する人の感想だね。私たちはただ美味しいね!だけど、咲良ちゃんは味の組み合わせやバランスに追及がいくのだもの」


 佳奈ちゃんの感想に久実さんまで頷いて同意している。


「ホント、私たちは料理しないからお野菜とお肉の組み合わせとか、どんな味になるとか想像できないから。こんな感想にならないのよね。美味しいは美味しいって感じで」


 久実さんに、ぶんぶん首を縦に振って同意する佳奈ちゃん。


「それで、伯母さま。今日はどうしてここに?」


 佳奈ちゃんの疑問はごもっとも。


 ここは雄介さんのお家だから、息子のうちに母が来てもなにも問題はないのだけれど。


 当の息子さんは仕事で不在。


 ここには許可を得た家政婦の私と、雄介さんの従姉妹の佳奈ちゃんの二人のみ。


 まず目的は佳奈ちゃんか私かというのは分かるのだが、流石に今日の用件までは聞かないと分からない。


「佳奈ちゃんと咲良ちゃんの二人で女子会しているって聞いたら、ずるいなって。私だって参加したいわ」


 なんと女子会に久実さんも混じりたかったらしい。


 久実さんだと、美人なお姉さんでも通るけれど。


 実際はお母さんと娘たちの女子会に変化すると思うのよね。


 佳奈ちゃんと顔を見合わせると、笑い合って頷き合う。


「伯母様、今日は三人で女子会にしませんか? 朝早くから来たってことはどこか行きたいところがありますか?」


 佳奈ちゃんが聞くと久実さんはキラキラと眩しいほどの笑顔を浮かべて言った。


「雄介は小さいころから関心なくって、行ったことが無いのだけれど。東京テーマパークに行きたいの」


 それは、世界で一番有名なネズミさんのいるテーマパークですね。


 私もアメリカにいるときにあちらのパークにも行きましたし、日本に帰ってから両パークすでに制覇しております。


「ちなみに、どちらがご希望で?」


 私はにこやかに聞き出すと、久実さんは既に買ったらしい三枚のチケットを差し出してきた。


「こっちに行ってみたいの」


 それは海の方のチケット。


「行きましょう! さ、二人とも、服はパンツで靴はスニーカですよ! いっぱい歩きますからね」


 私は生き生きと告げる。


「もしかして、咲良ちゃんネズミ好き?」


 その質問にはニッコリ微笑んで頷いた。


「さぁ、今日は世間の休日朝一から激戦ですよ。楽しみましょうね!」


 私の案内で、夜まで思う存分パークを堪能し二人もすっかり大好きになってくれた。


 仲間ができるって素晴らしい!


「今度は平日に、じっくりまた楽しみましょう」


 そんな言葉と共に、たくさんの戦利品と共に解散したのだった。


 そんな形で、週末の女子会は久しぶりのお出かけも挟んで大変有意義に過ごしました。


 週明け、雄介さんはまだ出張中なので帰宅は今週の半ばの予定。


 家事を済ませると、今日は本宅の雄蔵さんにお呼ばれしたので向かうことになった。


「ちゃんと車をそっちに向かわせるから、車で来るように」


 という連絡を貰っていたので、私はマンションのエントランスに付けられた車を見て運転手さんの顔を見覚えがあり、向かった。


「今日はありがとうございます。よろしくお願いします」


「これは、ご丁寧にありがとうございます。では、どうぞお乗りください」


 運転手さんに開けてもらった後部座席に乗り込むとドアも閉めてくれて、本宅へと向かう。


 マンションから本宅までは車で十五分ほどなので、そこまで離れていない。


 乗り心地抜群の車で十五分。


 先日お世話になった本宅へ到着。


「雄蔵さん、お元気そうでなによりです」


 玄関で迎えてくれた雄蔵さんに私はそう声をかける。


「おぉ、咲良ちゃん。よく来てくれた。今日はちょっとお願いがある」


 そんな話で向かった先は雄蔵さんの書斎だ。


 重厚感のある執務机に壁一面の本棚。


 ソファーセットも趣のある素敵な品物だ。


 このお家外側は純日本家屋なのに、中は西洋風なのがすごい。


 和室のお部屋のあるらしいのだけれど、私が入ったダイニングや借りた客間はばっちり洋室だった。


「今日、フランスのへリース社とウェブでの打ち合わせがあるのだが、フランス語のできる秘書が急病で困っている。通訳をお願いしたい」


 きっちり通訳できるか不安だが、時間もないのであろう。


「分かりました。やってみます」


 そうして、ウェブ打ち合わせがスタートした。


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