第47話

「じゃあ先生、早速行ってきますね。」


「······は?おいおい待て神代。」




制止する先生の声を彼は右から左に聞き流す。どんだけ耳遠いんですかあなた。




そして徐に目線を合わせると、私を射抜くような視線を向けてから柔らかく微笑した。その表情に少しだけ胸が高鳴ったのは秘密だ。




「行こっか。尊ちゃん。」




その言葉と同時に背中と膝裏に回される腕。




「うわっ······!」




有無を言わさず体が持ち上げられ、いつもよりも俯瞰気味になる視界に思わず息が詰まった。




これが俗に言う"お姫様抱っこ"だと気づいたのはそれから約数十秒後のこと。




細い体からは想像できないほど力強くてたくましい腕に、思わず「おぉ······」と感嘆の声が漏れる。




······って、感心してる場合かッ!




そんな正気に戻った私の耳に届く、「ギャアアアア!」という女子たちの轟く悲鳴の嵐。




うるさい!!私のほうが「ギャアアアア!」って言いたいわ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る