第44話

······やむを得ん。あの・・手を使うことにしよう。




実は小さい頃から空手を嗜んでいた私。




今は辞めてしまったけど、ジュニア大会で表彰台に登ったりと結構な好成績を残していた記憶がある。




······さて、これで私が何をしようとしているかおわかりいただけただろうか。




そう。「武力行使」だッ!!!




バレないようにそっと左手の指を揃える。




そして幸せそうな顔をしている彼に手刀打ちを喰らわせようと腕を振り上げた、その時。




「······尊ちゃん、腕鈍った?」


「っ!」




掴まれた左手。その手はゆっくりと彼の口元に引き寄せられていく。




そして左手の薬指に軽くキスを落とした。




「え」


「もう会えないかと思ってた······はぁ、好き。今日も尊いね······!」




恍惚とそう言い放つ彼の姿を見て、ゾワッと背筋に冷たいものが走る。




ヒィィィィ!お巡りさん!この人捕まえて!!!

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