第29話

「不良、ねぇ······」




不良は、嫌いだ。




意味もなく人を傷つけることになんの意味があるのか。




暴力では何一つ解決しない。また別の争いを生むだけ。




······そう。あの時だって──────────




ガタン。




「ん······?」




肘に何かがぶつかった感覚。




ふと視線を落とすと、そこにはティーカップから零れているお紅茶が。




「っやばい!」




それは無情にもお高そうなペルシャ柄の絨毯にシミを作っていく。




「ど、どうしよ······」




手元にあるのはドット柄のハンカチのみ。一先ずそれで応急処置するしかない。




ポケットからハンカチを探り当て、シミを隠すようにバサッと覆い被せる。




「これでよし······っと」




大丈夫、吸ってくれるよきっと。試験が終わる頃までには。

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