第10話



「私、転校する。」


「······は?」


「いや、だから転校。」


「それは分かってる!『何で?』ってこと!」


「何で、って······」




この子は私の唯一と言っていいほどの友達、相川 宵あいかわ よい




丁寧に巻かれた髪にくりくりとした目。




女の私から見ても問答無用で「可愛い」と言える容姿。




私とは違って陽キャラ臭がプンプンするのに、なぜ私と一緒にいるのか。それは今でも謎。



「お父さんの仕事で。」


「······あのさぁ、さっきから思ってたんだけどアンタ寂しくないの?」


「寂しいよ?こんなに仲良くなったの宵くらいだし。」




昔から転勤族だった私は、無意識に他人と線を引いてしまう癖があって。




そのせいで人が信用できなくなり、それが相手にも伝わってしまうという負のサイクル。




そんな状況でもちろん友達なんてできっこなく。




でも宵は違った。毎日毎日懲りずに話しかけてきてくれて、私もだんだんと心を開けるようになった。




······宵がいなかったら今頃私はどうなっていたんだろうか。

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