第7話
「…メール、開いてみるか」
一応。一応ね。
モヤモヤしたままなの嫌だしさ。
、
バッグからスマホを取り出し、迷惑メールに入っているお兄ちゃんらしき人のメールをタップする。お金貸せとかだったら縁切ろうっと。
次第に鼓動が早くなる心臓と少しこわばる手で画面を見る。目の前の画面を見て、思わず目を見開いた。
"沙那、元気にしてるか?何度も連絡してごめん。お兄ちゃんはいつでもお前の味方だからな!"
懐かしいお兄ちゃんの声で、脳内で何度もリピートされる。
胸がキュウっと締め付けられて、痛い。じわじわと目の奥から熱さがこみ上げてくる気がする。
「…今さらお兄ちゃんヅラしないでよ」
「その言葉、なんでもっと早く言ってくれなかったの。バカ兄貴、」
静かな部屋に自分の情けない声だけが響く。
その状況がお兄ちゃんが出ていった日と重なって、
『クイズ!これ何でしょうのコーナーです!』
『お前、そのままやないかい!』
ぼーっとテレビを見つめる。
楽しそうな観客の笑い声。
私がいくら悩もうが、世の中は止まることなく動き続ける。そんなの、わかりきったことなのに。
今の私の心にはそれが棘のように突き刺さる。
いつの間にか、頬には熱い涙が伝っていた。
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