第6話

何度かお兄ちゃんへの怒りや不満をぶつけたことはある。特に入院初期は口癖のようになっていた。


でも、返ってくるのは毎回「千尋にも事情があるんじゃないかな」なんて、お兄ちゃんを擁護する言葉。





なんでお兄ちゃんを責めないの?

私を一人にしたんだよ?





毎回もやもや抱えながら帰るのが嫌で、だんだんとお兄ちゃんの話題を出さなくなっていった。




高校に入ってからは学校、バイトの繰り返しの日々。



友達同士で寄り道しながら帰るのが羨ましい。

オシャレな服を着て遊べるのが羨ましい。




――――――――――いいな、楽しそうで。



もし、お母さんが倒れなかったらこんなことにはならなかった?



”もしも”を考えったって現実が変わることはないのに、隙あらば人を責めそうになる自分が嫌になる。



きっとこれからも、私は家族を見捨てたお兄ちゃんを許せそうにない。

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