第5話

「ふかふか〜!幸せ〜!」



家に帰るなりすぐさまベッドにダイブ。嫌なことがあった時はこれに限る。


毛布に顔を埋めると、ふんわりとした温かさに包まれて心地いい。



「……お兄ちゃん、か」



先ほど病院でお母さんに言われたことが未だに胸に引っかかる。



そういえば、最近になってお兄ちゃんらしき人からメールが届くようになった。怪しいし、開かずに即迷惑メール行きだけど。




"結城 千尋"




「確かに、お兄ちゃんの名前ではあるんだよなぁ」



初めてメールが届いたときは、心臓が止まるんじゃないかってくらい驚いて、何度も確認して。



そもそもどこから私のメールアドレスを手に入れたのだろう。…怖いから詮索するのはやめよう。赤の他人だったら普通に犯罪だからね。本気で。




「そろそろ向き合うべき、なのかな」




お兄ちゃんの話をしていた時のお母さんの表情は寂しそうな、悲しそうな。きっと私たち兄妹の仲が良くないことを察しているんだろう。


お兄ちゃん(?)もメールを送ってくるくらいだから歩み寄ろうとしているのかな、とも思う。


まぁ、それを無視して逃げているのは、紛れもない私なんだけど。



「…無理だよ。今さら元の関係に戻るなんて」



だって、置いていったのはそっちじゃん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る