第3話

今日は久しぶりのお見舞いの日。



いつものように、病室に飾ってあるガーベラの花を綺麗に整える。あまり慣れたくないものだけど、最近は自分でも手馴れてきたなと思う。




「ねぇ、お母さん」


「ん?どうしたの?そんな真面目な顔して」




真面目な顔をする私があまりにも珍しいからか、編み物をしていた手を止めて私に視線を移す。




「私、お母さんが入院してからずっと……お兄ちゃんに頼らなくても生きてこられたよ。だからさ、」




そうまで言うと、覚悟を決めて大きく息を吐いた。目を丸くしているお母さんが珍しくて、なぜかこちらまで緊張してしまう。




「……お母さんのことは私が守るから」


「ふふっ、ありがとう」




そう言って目を細めて微笑むお母さんは、今にも消えてしまいそうなくらい儚い。表情こそ笑っているけれど、今のお母さんの笑顔はなんだか痛々くて。


無理して笑ってるのくらいわかるよ。何年一緒にいると思ってるの?

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